被爆2世 阪口博子さん 高校生演説「実相伝わる」
「立ち会いたい」。被爆2世の阪口博子(71)=長崎市鶴見台2丁目=は胸が高鳴った。2013~14年にノルウェー、メキシコ、オーストリアで計3回開かれた「核兵器の非人道性に関する国際会議」。初回のノルウェー会議と、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)など非政府組織(NGO)のロビー活動を紹介するドキュメンタリーをテレビで見た時のことだ。
元県職員組合書記の阪口は、親の被爆体験の証言活動や、核廃絶署名を国連に届ける高校生平和大使の世話をしてきた。ICAN関係者の協力を得て14年2月のメキシコ会議に、当時、活水高1年で後に高校生平和大使となる小柳雅樹と参加することになり、小柳には演説の場も用意された。
米国やロシアなど核大国は不参加だったが146カ国の外交官やNGO関係者ら約800人が集まった。本会議冒頭の被爆者セッションで、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中熙巳やカナダ在住のサーロー節子ら被爆者4人が登壇、被爆体験を話した。
その中で小柳は、53歳の時にがんで亡くなった祖母の被爆体験を紹介し、核の非人道性を訴えることは「被爆3世としての使命だ」と語った。リハーサルなしのぶっつけ本番を堂々とやり遂げた。「感動した」「若者の頑張りがうれしい」。反応は良かった。「被爆の実相が世界に伝わっている」。会場で見守った阪口は手応えを感じた。
会議では専門家や研究者が核の使用に伴う健康、社会、経済への悪影響なども報告。各国による一般討論で、日本など「核の傘」に依存する国々が段階的な核軍縮を主張したが、「法的に核兵器を禁止すべきだ」という意見が大半だった。
00年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で核廃絶の「明確な約束」をうたう画期的な最終文書が採択されたが、具体的に進まず、非保有国の高まる不満が3回の国際会議につながった。メキシコ会議の議長総括は「行動の時だ」と強調、核兵器禁止条約締結の努力を各国に促した。そのうねりは17年7月に122カ国・地域が賛成した核禁条約の国連採択、そして今月22日の発効に結実した。
「小さな国々が集まって条約ができた意義は大きい」と阪口は言う。「どう実効性を持たせ、日本政府も条約に参加させるかが課題だが、核兵器を持つことが許されない世界はくる」(文中敬称略)