「核問題を解決する『誰か』になりたい」と話す中村さん=長崎市内

「核問題を解決する『誰か』になりたい」と話す中村さん=長崎市内

ピースサイト関連企画

被爆・戦後75年 ナガサキ・ユースの視点 若者と平和活動・6 【コロナ】 命に向き合い 悩み考え 中村楓さん(19)=8期生=

2020/07/23 掲載

「核問題を解決する『誰か』になりたい」と話す中村さん=長崎市内

「核問題を解決する『誰か』になりたい」と話す中村さん=長崎市内

【コロナ】 命に向き合い 悩み考え 中村楓さん(19)=8期生=

 「新型コロナウイルス感染拡大で、核兵器への注目が徐々に下がっていると感じる」。6月下旬、長崎市内であった核問題について考える市民講座。パネルディスカッションで、ナガサキ・ユース代表団8期生の中村楓(19)=長崎大2年=は懸念を口にした。
 核軍縮の道筋などを探るため、4、5月に米ニューヨークの国連本部で予定されていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は新型コロナ問題で延期に。被爆75年の今年、中村ら現役代表団7人が再検討会議に合わせて予定していた渡米も取りやめになるなど、多くの活動の機会が奪われた。核廃絶に向けて行動するには、核抑止論や核保有国の主張など「自分にない視点を知ること」が重要だと考えていただけに、渡米中止には落胆を隠せなかった。
 新型コロナの感染拡大は、核廃絶に向けた世界の連帯を促す好機になる-。識者や被爆者らの間にはこうした期待感も強いが、中村自身は否定的だ。コロナ禍の中、核問題はかすんでいるようにみえる。
 一方で、核問題ではないが、中村はここ数カ月、コロナ禍の陰で、会員制交流サイト(SNS)などを通じた社会の大きな動きを感じ取っていた。検察庁法改正案や米国での白人警官による黒人男性暴行死事件などを巡り、ネット上に相次いで投稿された抗議や人種差別反対の声。これまで社会問題にあまり関心がなかった友人ですら、SNSで検察庁法改正案に抗議しているのを見て、正直、驚いた。
 コロナ感染拡大に伴う外出自粛などもあり、一人一人が社会問題に向き合う時間を得たのかもしれないと思う。そして、多くの人命を奪い、脅かすコロナ禍は世界の人々が命について考える機会になったとも感じる。ただ、核問題も身近な社会問題、命の問題なのだと理解してもらうには具体的にどう行動したらいいのか、まだ分からない。
 岡山県生まれの中村には忘れられない光景がある。小学生の時に訪れた広島市の原爆資料館。熱線で焦げた三輪車に衝撃を受けた。自分より幼い子の「普通の幸せ」が、一発の原爆で一瞬で奪われた現実。それが中村の原動力になっている。今、改めて思う。「核問題は誰かがやらないと絶対に解決できない。その『誰か』に、私はなりたい」。代表団の一人としてこれからも悩み、考え続ける。

(文中敬称略)


 県や長崎市、長崎大でつくる核兵器廃絶長崎連絡協議会が県内の学生らを対象に募集し、国連本部で開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議へ派遣するなどしている「ナガサキ・ユース代表団」。本年度が8期生になる。現役生や経験者への取材、長崎新聞社が実施したアンケート結果を通して、平和活動への若者の思い、課題を考える。

 

◎アンケート結果

 -今、最も関心がある社会問題は(新型コロナウイルス問題を除く)。
 ▽「年金問題。私たち世代がもらえるのか」(3期・30歳男性)
 ▽「差別や偏見によって多様性を排除し、分断しがちな社会の動き」(3、4期・25歳男性)
 ▽「アフガニスタンの紛争問題」(5期・22歳女性)
 ▽「不倫問題。結婚していても心が満たされないのは、既に核兵器を持っているのに、さらに強い兵器を持とうとする心理と似ている」(5期・27歳女性)
 ▽「東アジア、日本の安全保障上の問題」(6期・24歳男性)
 ▽「香港、ウイグル、チベットを中心とした中国の人権問題」(7期・31歳女性)