【苦悩】温度差痛感 答え模索 中島大樹さん(22)=6、7期生=
昨年11月、学生ら約20人が参加し、長崎大文教キャンパスでパネルディスカッションが開かれた。その前日、被爆地長崎は38年ぶりのローマ教皇訪問に沸いた。パネルディスカッションは、教皇が被爆地から発信した核兵器廃絶のメッセージについて考えるためだった。
主催したのは、平和活動に携わる全国の若者をつなぐ「ユース・ネットワーク・フォー・ピース」(YNP)。2018年11月に長崎であった「第6回核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」の分科会で、中島大樹(22)=ナガサキ・ユース代表団6、7期生、長崎大大学院1年=が、国内の若者の活動を共有・発信するため設立を提唱し、発足した組織だ。
YNPにとって、この日が初の大々的なイベント。中島が司会進行役を務め、参加者からは「メッセージの意義を考え、行動に移したい」などと核廃絶に向けた活発な声が上がった。“船出”は順風満帆-かに見えた。
だがこれ以降、YNPは目立ったイベントを開けず、活動は尻すぼみになっていく。今春に入ってからは、仕事や就職活動などで忙しいメンバーも出てきて足並みがそろわず、現在は事実上、休止状態だ。若者がつながれば、核廃絶や平和へ力を発揮する大きな塊になる。それは確かだと信じている。一方で、「団体で取り組む難しさを感じている」。中島の表情に苦悩の色がにじむ。
自身が平和活動に取り組むのは、単純に「楽しいから」。核問題は「終わりがなく、学ぶことが多い。好奇心をそそられる」。だが、平和活動に取り組む若者の間にもモチベーションには温度差がある。その理由は何か。中島は「平和活動が職やお金につながらないという諦めもある。個人の精神論だけが問題ではない」とみる。平和活動の産業化については、核問題に詳しい専門家から必要性を説く声もあるが、長崎を含め、国内ではほとんど定着していないのが現状だ。
YNPが休止する中、個人でもできる活動をと、中島は核問題に関心を持つ全国の学生や社会人とオンラインでつながり、各地での活動内容の共有を始めた。「いろんな人と話しながら、手探りでやっていくしかない」。どうやったら、同じ若者を平和活動に巻き込んでいくことができるだろう-。中島は、その答えを探し続けている。(文中敬称略)
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県や長崎市、長崎大でつくる核兵器廃絶長崎連絡協議会が県内の学生らを対象に募集し、国連本部で開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議へ派遣するなどしている「ナガサキ・ユース代表団」。本年度が8期生になる。現役生や経験者への取材、長崎新聞社が実施したアンケート結果を通して、平和活動への若者の思い、課題を考える。
◎アンケート結果
―代表団の活動を振り返って、印象に残っていることや悩んだことは。
▽「被爆者をはじめ、多くの人たちの核廃絶への強い思い」(2期・25歳女性)
▽「若いというだけで、政府高官が話を聞く機会を設けてくれたこと」(3期・24歳男性)
▽「異なる年齢やバックグラウンド、平和に対する視点を持つ人が集い、毎日刺激的だった」(3、4期・25歳男性)
▽「メンバー間の平和に対する認識の違い」(5期・23歳女性)
▽「いつも同じ人や団体と意見交流していると感じていた」(7期・22歳女性)
▽「平和活動をしている人が周囲に少なく、なかなか活動を友人に理解されない」(8期・22歳男性)