平和宣言文起草委で最年少の学生委員の光岡さん。大人からの期待に押しつぶされそうになったこともある=長崎市内

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被爆・戦後75年 ナガサキ・ユースの視点 若者と平和活動・1 【期待】「共に頑張ろう」胸に 光岡華子さん(24)=5期生=

2020/07/18 掲載

平和宣言文起草委で最年少の学生委員の光岡さん。大人からの期待に押しつぶされそうになったこともある=長崎市内

【期待】「共に頑張ろう」胸に 光岡華子さん(24)=5期生=

 6月6日、長崎市内。今年8月9日の平和祈念式典で市長が読み上げる平和宣言文の起草委員会初会合に、最年少の学生委員として出席した光岡華子(24)=長崎大大学院2年=はどこか冷めた思いでいた。市が示した原案。文面には、核廃絶へ若い世代の行動を促す文言が並んでいた。
 「若い世代は核兵器をなくす力になれる」。そんな期待を、これまでどれだけ背負ってきただろう。「またか」-。少しうんざりした思いでいると、親世代の委員たちが次々と指摘した。「(若い世代への)期待だけを語るのではなく、大人たちが何をなすべきか責任を考えることも大事だ」。驚きだった。
 最新の核情勢などを学び、活動する「ナガサキ・ユース代表団」の5期生。同大2年生だった2016年にマレーシアでのボランティア活動に参加し、紛争の影響で逃げるように生きる不法移民の集落を訪ねたことが、国際情勢に関心を持つようになったきっかけだ。出身の佐賀県から移り住んだ被爆地長崎で多くの被爆者とも出会い、核問題への意識が醸成されていく。
 17年、小中学校などでの平和講座に取り組む学生団体「ピースキャラバン隊」の代表に。子どもたちと年齢の近い学生たちが被爆の実相や核兵器の脅威を伝える試みとして注目され、光岡も手応えを感じていた。だが-。
 活動が軌道に乗るにつれ、周囲の大人から平和関連イベントの運営を任されることが多くなった。無責任に「若者らしい何か新しいことをやってよ」と“丸投げ”されたこともある。
 集中する業務、不安、重圧…。「期待はうれしかった。でも一人でストレスを抱え込んで気持ちが折れそうな時もあった」。以前のように活動を楽しめなくなったこともあり、今年5月末、隊を“卒業”した。
 もちろん親身に支えてくれた人たちもいる。でも、成果しか見ていない一部の大人には不信感を持っていた。それだけに、起草委での親世代の委員らの発言は「自分たちも頑張るから、共に頑張ろう」というメッセージに聞こえ、うれしかった。
 来春、県外で就職する。被爆地を離れても、何らかの形で平和活動に携わりたい。そして思う。「私も、自分より若い世代が活躍できるような土台をつくりたい」。“大人”になった自分がどんなサポートができるか。光岡にとって大きな課題である。(文中敬称略)

 県や長崎市、長崎大でつくる核兵器廃絶長崎連絡協議会が県内の学生らを対象に募集し、国連本部で開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議へ派遣するなどしている「ナガサキ・ユース代表団」。本年度が8期生になる。現役生や経験者への取材、長崎新聞社が実施したアンケート結果を通して、平和活動への若者の思い、課題を考える。

 

◎アンケート結果
 -若者による「継承」を活発化させるため、大人や行政、政治にどんな支援を求めるか。
 ▽「平和活動を継続できるような、環境や資金面でのサポート」(複数)
 ▽「平和や核問題を『面白い』『もっと知りたい』と思える教材や授業づくり」(3、4期・26歳女性)
 ▽「国際交流や異世代交流など若者の興味ある分野と結びつけ、才能や知識を向上させる取り組みの支援」(1期・28歳女性)
 ▽「若者に対する『使命感』のようなものを、大人が伝えすぎないこと」(6、7期・22歳男性)
 ▽「『若い人=継承しなければいけない』という凝り固まった考えを、大人が一方的に押しつけないこと」(5、6期・22歳女性)