活水高平和学習部長 永石菜々子さん(18) 核なき世界へ具体策を
長崎には来ないんだ。がっかりした。オバマ大統領は広島を訪問するだけで満足しないでほしい。長崎にも被爆して亡くなった人が大勢いる。世界中の人がそのことを忘れないよう、きちんと慰霊をしてほしい。
2014年から1年間、米セントポール市の高校に留学した。歓迎会で生徒手作りのカードを受け取ったら、隅の方に小さなきのこ雲の絵と「1945」の数字が書かれていた。被爆の惨状を知っていれば、長崎出身の私にそんなカードを渡せないはずだ。悪意があるというより、知識がないのではないかと思った。
ある日の授業で、長崎原爆の犠牲になった「ふりそでの少女」について話し、黒焦げになった遺体の写真を見せた。それまで核兵器が必要だと思っていた生徒から、核のない世界を望む意見が返ってきた。事実を知れば、考えは変わると感じた。
大統領にも原爆で多くの人が苦しんでいることを知ってほしい。被爆者の声に耳を傾け、それを自分自身に置き換えて考えてほしい。大切な家族の命を奪われた後、何十年もつらい気持ちを抱えながら生き続けなければならないことを。そして広島で得たものを、今後どう生かすのか示してほしい。
というのも、大統領は09年4月、「核なき世界」を提唱したが、核を取り巻く国際情勢は何ら改善していないように思う。いったい何をしてきたのだろうか。日本の高校生は平和活動で核廃絶を訴えている。先月、米カリフォルニア州モントレーであった高校生らの核軍縮フォーラムでは、米国やロシアの生徒も核廃絶へ熱い思いを語っていた。大統領はノーベル平和賞を受賞したのだから、来年1月の退任までに一つでも具体的な政策を打ち立てる責任があると思う。