被爆者・平和推進協 継承部会長 末永浩さん(80)
思い複雑も 未来への一歩
オバマ米大統領が27日、世界で最初の被爆地、広島を訪れることが決まった。原爆投下から71年。長い年月を経てようやく実現する訪問に、もうひとつの被爆地、長崎の被爆者らは何を思うのか。被爆者、識者、若者の3人に聞いた。
被爆者は決して歓迎一色ではない。複雑な思いを抱いている。原爆で家族を失った人がいる。放射能の影響で今も苦しんでいる人がいる。私の母と妹ががんで亡くなったのは被爆の影響だと思っている。原爆を投下した国の大統領に「謝罪」を求めたい被爆者は多いだろう。
だがそれを私は声には出さない。広島訪問を核兵器のない未来へつなげてほしいと願っているから。そして何より、被爆地で被爆の実相に触れてもらうことが大切だ。ただ被爆地は二つあり、広島だけでは半分しか見たことにならない。今回は無理でもいずれ長崎を訪れてほしい。
大統領は広島平和記念資料館を見学し、被爆者と面会して生の声を聞くべきだ。そのうえで、核兵器の非人道性についてどう考えたのかを語り、核廃絶への決意を改めて示してほしい。実情を知らずに核廃絶を進めることは夢物語だ。
もうひとつ、なぜ米国は2発もの原爆を投下したのか、その理由を語ってほしい。未来を見据えるためには、現在と過去を切り離すことはできない。大統領が自ら歴史認識を表明することが、未来への一歩になるはずだ。
それが、米国内でいまだに根強い「原爆投下の正当化論」を改めるきっかけになるかもしれない。と同時に日本側も「だまし討ち」とされる真珠湾攻撃や、アジアへの加害責任にもっと向き合わなければならない。そうすることで先の大戦に関わった国同士の真の和解が一層進むと思う。
歴史は一直線には進まない。これまでもジグザグにしか進んでこなかったし、これからもそうだろう。それでも世界が核廃絶という大きな理想に向かって一歩でも進めば、今回の訪問には意義がある。