米兵による事件(1990年代)
「第二の沖縄にしない」
1996年7月16日未明。佐世保市島瀬町の駐車場で、米兵=当時(20)=が、帰宅途中の女性=当時(20)=にカッターナイフを突き付けた。米兵はのど元を切り裂き、現金が入ったバッグを奪い逃走した。
前年の95年9月、沖縄で米兵3人による少女暴行事件が起きた。しかし、米軍側は日米地位協定を「盾」に身柄の引き渡しを拒否、沖縄をはじめ世論の批判は急激に高まった。
これを受け、日米両国は協定の運用を見直し、凶悪犯罪で日本側の要請があれば「(米国側が)好意的考慮を払う」ことで合意。必然的に佐世保の事件は、起訴前の身柄引き渡しが焦点となり、県警には緊張が張り詰めた。
市民の抗議活動も熱を帯びた。当時活動に参加した宮野由美子さん(67)は「身柄引き渡しは当然と考えながらも、どこかで不安はあった」と振り返る。
事件から4日後。全国で初めて協定の運用見直しが適用され、県警は強盗殺人未遂容疑で米兵を逮捕した。「日米両国に佐世保を第二の沖縄にしないとの思惑があったと思う。沖縄で戦い続けてくれた皆さんのおかげ」。宮野さんは胸をなでおろした。