出会いこそ生きる証 瀬戸内寂聴展 4

エッセー「奇縁まんだら」の挿絵として、横尾忠則さんが描いた遠藤周作の挿絵原画=長崎市、県美術館

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出会いこそ生きる証 瀬戸内寂聴展 4 「奇縁まんだら」 横尾忠則さん挿絵 デフォルメに楽しさ

2015/08/01 掲載

出会いこそ生きる証 瀬戸内寂聴展 4

エッセー「奇縁まんだら」の挿絵として、横尾忠則さんが描いた遠藤周作の挿絵原画=長崎市、県美術館

「奇縁まんだら」 横尾忠則さん挿絵 デフォルメに楽しさ

交友のあった作家や芸術家、政治家などの思い出を軽妙につづったエッセー「奇縁まんだら」。2007年から約4年間、日本経済新聞で連載され、瀬戸内寂聴さんの傑作の一つといわれる。
「まんだら」とは、寂聴さんの周りを“仏さま”になった故人たちが円を重ねるように囲んでいる様子。「出逢いは生きる栄養となり、心身を育んでくれた。振り返ってみれば私の出会った人々の何と魅力的だったことか」。著書でこう明かした通り、136人との不思議な縁を愛情を込めて紹介している。
エッセーの魅力をさらに引き出したのが、美術家の横尾忠則さんによる挿絵。1960年代からグラフィックデザイナーとして世界的に注目され、82年の画家転向後も独特の色彩感覚あふれる作品で知られる。
本展では、三島由紀夫や岡本太郎ら48人に関する寂聴さんの文章と、横尾さんの挿絵原画を展示。写真を基にアクリル絵の具で描かれた肖像画は、コミカルな表情もあれば、重々しい雰囲気もあり、横尾さんの豊かな想像力に魅了される。
オレンジ色のスーツに身を包み、顎に手を当てて考え込む遠藤周作。敬虔(けいけん)なカトリックのイメージが強いが、寂聴さんは「ふざけて人を笑わせるのが好きだった」と明かす。本展で展示している原画3枚は、遠藤の知られざる素顔を巧みに描いている。
「デフォルメに絵を描く楽しさがある。知っている人だと思い切った表現ができなくなる。でも、写真が表現を引き出してくれ、すべて異なる描き方ができ、冒険的な試みもした」。横尾さんはこう振り返る。
寂聴さんが「天才」と評する14歳年下の横尾さん。寂聴さんについて「親戚の親しいおばさんのよう」というが、「人脈が広い上、交流が濃密。ものすごい記憶力の持ち主で、好奇心が強く、人が好き」。お互いの本質を見抜いたコラボレーションが「まんだら」と広がっている。