核超大国で伝える NPT・訪米報告 4

ケリー理事長(手前右)と会談する藤森さん(左)ら被爆者=1日、米ニューヨーク

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核超大国で伝える NPT・訪米報告 4 懸念 「科学の勝利」に反論

2015/05/22 掲載

核超大国で伝える NPT・訪米報告 4

ケリー理事長(手前右)と会談する藤森さん(左)ら被爆者=1日、米ニューヨーク

懸念 「科学の勝利」に反論

4月23日、米国が原爆を開発した「マンハッタン計画」の研究施設があるニューメキシコ州を、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)の訪問団が訪れた。本県から参加した被爆者の川副忠子さん(71)によると、核をテーマにした国立博物館は広島、長崎原爆でやけどを負った人の写真も展示していたが、ガイドは「二重被爆したのに長生きした人もいる」などと説明した。

ウラン採掘の博物館では、本物のウラン鉱石が無造作にガラスケースに入れられ、線量計を近づけると針が一気に動いた。放射線防護の設備は特になかった。また別の場所で、採掘に関わった先住民に会うと「放射能の怖さは一切知らされなかった」と語った。

「放射線の危険性が米国ではあまり認識されていない。だから被爆後の惨状も十分分からないだろう。原爆投下は正しかったと誇らしげに言わんばかりの展示もあり、がくぜんとした」

1週間後の1日、マンハッタン計画の関連施設の国立歴史公園化を進めるNPO団体「アトミックヘリテージ財団」のシンシア・ケリー理事長と田上富久長崎市長らの面談がニューヨークで実現した。国立歴史公園化をめぐり、長崎市は昨年12月、原爆投下の正当化につながることを懸念し、核兵器を賛美しないよう米国側に求めていた。

「米国にとっての歴史を残すのが意図。科学の勝利の象徴だと認識して教訓を学ぼうというのがこの公園です」。ケリー氏の説明に、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)事務局次長の藤森俊希さん(71)が反論した。「人類と共存できない兵器は科学の勝利ではない。核兵器をなくして初めて科学の勝利といえる」。原爆に対する米国側と被爆者との認識の違いが鮮明化した瞬間だった。

同席した核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委の前川智子さんは、オハイオ州の空軍博物館で長崎原爆を投下した爆撃機を見た際、説明書きに「第2次世界大戦を終わらせた航空機」とあったことを思い出した。「公園化で被爆者の思いが踏みにじられる懸念がある」