未来へ向けて NPT再検討会議を前に 中

「核兵器の非人道性を米国の市民にも伝えたい」と語る朝長さん=長崎市内の自宅

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未来へ向けて NPT再検討会議を前に 中 核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員長 朝長万左男さん(71) 世界を後戻りさせない

2015/04/22 掲載

未来へ向けて NPT再検討会議を前に 中

「核兵器の非人道性を米国の市民にも伝えたい」と語る朝長さん=長崎市内の自宅

核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員長 朝長万左男さん(71) 世界を後戻りさせない

非人道性に着目して核兵器の禁止を目指す近年の国際的潮流に大きな期待を寄せる。「もう世界を後戻りさせない」。そんな思いで渡米する。
原爆投下時は2歳。爆心地から2・7キロの自宅にいた。半壊したが無傷だった。「家の下敷きになっていたら、その後の火災に巻き込まれていただろう」
高校時代、同年代で白血病になる人が続出。原爆後障害への恐怖に駆られた。その後、研究者の道へ。半世紀近く被爆者医療に携わり、近距離被爆者が高齢でも白血病に移行しやすい骨髄異形成症候群になる可能性が高いことなどを発表してきた。
こうした研究成果は2年前、ノルウェーであった「核兵器の非人道性に関する国際会議」で報告。原爆被害は激烈で、体を生涯侵し続けることを約120カ国の代表に伝えた。メキシコの第2回会議では、現代社会で原爆が使われた場合の大規模被害を予測し解説。すると核兵器の威力と影響を理解した各国代表から「廃絶すべき」との発言が相次いだ。手応えを感じた。
ウィーンでの第3回会議は核保有国の米英が初参加。米国は「核兵器禁止条約をつくる動きは支持しない」「現実的で段階的な核軍縮が核の脅威を減らす最も効果的な手段だ」とし、あらためて大きな壁を認識せざるを得なかった。
非政府組織(NGO)核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委は今回、米ニューヨークで「被爆者フォーラム」を開く。非人道性会議で報告してきた内容をまとめて発表し、科学的見地から核兵器の残虐性を理解してもらうつもりだ。「原爆が先の大戦の終結を早めた」とする米国内の正当化論を一人でも転換してもらいたいとも思っている。
ただ日本は、米国の「核の傘」に依存し、核兵器の抑止力を助長している立場。廃絶を訴える被爆国として、常にジレンマがある。だが、核兵器禁止のルール作りに向けた国際的な議論の根幹はできつつある。
「この流れに反する側にはプレッシャーをかけ続ける」。被爆者として、科学者として、そう誓っている。