ピースサイト関連企画

70年の節目 被爆2~4世アンケート 1 核廃絶「できない」5割超

2015/02/09 掲載

核廃絶「できない」5割超

「核兵器廃絶は可能だと思うか」との問いに、回答者の54・8%が「いいえ(廃絶できない)」と答え、「はい(廃絶できる)」の31・7%を大きく上回った。国際社会が廃絶の道筋を築くことができない中、現状追認や諦めが広がる状況を浮き彫りにした。

「いいえ」の回答者は「国連で核兵器を持つ国は発言力が強い」(67歳男性)などと理由を記載。「日本は米国の核兵器に守られている、と思う人がいる限り難しい」(52歳男性)と、日本人の意識を問う人も。

「はい」の理由では、「核廃絶を訴える国が増えている」(59歳女性)と非人道性に着目するなどの世界の動きに期待。「可能かどうかでなく、廃絶しなければならない」(46歳男性)と強い意志を訴える人もいた。

一方、米国の「核の傘」への依存については、日本の防衛力の乏しさや周辺国の脅威などを根拠にする賛成派が25・3%、核兵器の危険性を訴える反対派が26・3%と拮抗(きっこう)。「分からない」とする人は39・2%に達した。

集団的自衛権行使容認の関連法整備については「絶対に推進すべきではない」33・3%、「あまり推進すべきではない」17・7%で、合わせて51・0%と過半数。理由は「結局は戦争に加担することになりそう」(39歳女性)など、不安がにじんでいる。一方、「積極的に推進すべき」は2・2%、「推進すべき」11・3%、合わせて13・5%。「分からない」は24・2%だった。

◎「健康に不安」6割近く/行政の実態調査、援護策望む

「健康上の不安はありますか」との問いには、「はい」が59・7%、「いいえ」が29・6%。6割近くが健康上のことを心配していることが分かった。特に回答者や身近な人が、がんなどの病気を患った経験があるほど、不安感は強いようだ。

「はい」を選んだ理由は「親と同じがんになった」(55歳男性)、「2世の弟が白血病で亡くなった」(52歳男性)など実体験によるものが多かった。

被爆との関連性は明らかではなくとも、体調に変化が出やすい中高年世代に差しかかった2世にとっては、健康状態への不安は切実。「血液検査等で白血球の異常があると2世であることが影響しているのではと思う」(52歳女性)、「がんになりやすいのではないか」(54歳男性)といった不安を抱えている。被爆2世として、子や孫への健康影響を懸念する声もあった。

一方、「いいえ」の理由は「いたずらに心配しても一緒」(50歳女性)など。

「健康状態を含む行政の実態調査は必要か」の項目では、「被爆者の影響解明」(54歳女性)、「後世のため状況を把握して資料として残す」(59歳女性)などとして67・7%が「はい」。「いいえ」は6・5%、「分からない」は17・2%。7割近くが行政の実態調査を望んでいる。

「がん検診など援護策が必要か」は67・2%が「はい」。「いいえ」は8・6%、「分からない」15・6%。2世らの援護策を望む声が強いことも分かった。

◎役割/後世へ語り継いでいく/被爆者の高齢化に焦り

被爆者や戦争体験者が減っていく中で、被爆2~4世の役割とは。「原爆の恐ろしさについて伝えていくこと」(42歳男性)など、親や祖父母、親戚から聞いた被爆体験を、後世へ語り継いでいきたいという思いが寄せられる一方、「何をすればいいのか分からない」(44歳女性)と戸惑う声も多かった。

「兄、姉も年老いていき、伝承する人がだんだんいなくなる」(63歳女性)と、被爆者の高齢化が進む状況への焦りがうかがえる。「子どものころ聞いただけという人が多いかもしれない。もう一度あらためて聞いて記憶を更新し、記録も残すべき」(46歳男性)という提案や、「2、3世とこだわるより、長崎に住む者として語りついでいけたら」(49歳女性)という声もあった。

「語る会などがあれば参加してみたい」(66歳男性)、「友人や子に父の経験を語っている」(53歳男性)、「自分自身が関心をなくさないように心掛けている」(44歳女性)などの声からは、被爆者の願いを風化させたくないという心情が伝わってくる。

◎中韓との関係/毅然として対話求める/客観的な歴史検証必要

歴史認識や領土問題をめぐり冷え込む日中、日韓関係。2~4世も、被爆者アンケートで出た多くの回答同様、「十分に話し合い、よい関係を」(51歳男性)など、対話による関係改善を求める人が少なくない。その上で「もっと強気で臨んで」(32歳女性)、「反論すべきところは反論を」(46歳女性)と毅然(きぜん)とした態度を望む意見が目立った。

日本の戦争加害について「間違いを正して前進を」(41歳女性)、「中韓の戦争被害者にはもっとよくすべき」(57歳男性)など謝罪や補償を促す声の一方、「過去のことばかり固執している」(54歳男性)、「いつまでも謝り続けなくてはいけないのか」(44歳女性)との反論も多い。

中には「国交断絶すべき」(43歳女性)と厳しい主張もあったが、「立ち止まり、国民全体で考えるべき」(66歳男性)、「事実をもとに冷静な対応を」(57歳男性)など、客観的な歴史検証の必要性を訴える人が一定数いた。

◎被爆者への思い/ねぎらいや感謝の言葉/平和を守る決意込める

「被爆から70年を迎えようとする今、被爆した親、祖父母らや、その世代にどんな言葉を贈りたいですか」。答えには、ねぎらい、いたわり、尊敬、感謝の言葉が続いた。

「私には想像できないくらいつらい体験をしたと思います。こんな平和な日本にしてくださり、ありがとうございます」(22歳女性)。このコメントに代表されるように、多くの被爆2~4世は、被爆した世代が大変な苦痛と苦労の中で今の社会を構築してきたということをしっかりと受け止めている。

前立腺がん終末期の86歳の父を持つ53歳の女性は、これまでの大動脈瘤(りゅう)など父の闘病生活を回顧。「被爆者でなければ少しは快適な老後を楽しめたのかも」「いったい戦争は何のためにあるのか。戦争も原爆も二度と行ってはいけないと父を見て切実に思います」とつづった。被爆した世代の姿から戦争と原爆を感じ取り、不戦を誓うこともまた、ある種の心を込めたメッセージだ。

「私たちも後を継いで、平和を求めて努力する」(53歳男性)、「世界の平和に向け、私たち子孫が取り組みを行っていきます」(51歳男性)-。決意を込めた言葉が並んだ。

【質問項目】

◎選択式(理由を記述)

◆親や祖父母から被爆当時の体験を直接聞いたことがありますか

◆被爆体験のない人が、後世に被爆体験を伝えることができると思いますか

◆核兵器廃絶は可能だと思いますか

◆日本は米国の核兵器に守られているとされますが(核の傘)、この状況を続けた方がいいと思いますか

◆日本政府は憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認し、今後、関連法案の整備を進める考えです。推進すべきと考えますか

◆健康上の不安はありますか

◆被爆2、3世(回答者は2~4世)の健康状態など行政の実態調査は必要だと思いますか

◆被爆2、3世(同)への援護策は必要と思いますか

◎記述式

◆若い世代に被爆体験を語り継いでいく上でどのような取り組みが必要だと思いますか

◆被爆者や戦争体験者が減っていく中で、被爆2、3世としての役割はあると思いますか

◆中国や韓国との関係が冷え込んでいますが日本政府はどのようにすべきと考えますか

◆被爆した親、祖父母らの世代にどんな言葉を贈りたいですか

県内と米国合わせて計10の被爆者団体、被爆2世団体に協力を依頼し、2014年9~12月に実施。186人(男性100、女性80、無回答6)から回答を得た。設問は12問。うち8問は選択肢から一つを選び、回答理由の記述を設けた。残り4問は記述式。

協力団体は次の通り。

▽長崎原爆被災者協議会▽長崎原爆遺族会▽県被爆者手帳友の会▽県被爆者手帳友愛会▽県原爆被爆者島原半島連合会▽長崎原爆被爆者の会▽川棚町原爆被爆者協議会▽県原爆被爆者諫早連合会▽米国広島・長崎原爆被爆者協会▽県被爆二世の会

▽総数=186(男100、女80、無6)▽年齢(1月1日現在)=10代2、20代4、30代7、40代51、50代75、60代36、無11▽被爆者との間柄(複数回答)=子145、孫39、ひ孫5、無31▽居住地=長崎78、長与・時津36、諫早25、島原半島11、その他の県内8、県外(海外含む)13、無15