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70年の節目 被爆者アンケート 2 核廃絶へ心境複雑

2015/01/01 掲載

核廃絶へ心境複雑

◎核廃絶へ心境複雑

核兵器廃絶は可能かという問いは、「はい」(32・2%)「いいえ」(31・2%)「分からない」(32・7%)が拮抗(きっこう)。世界にいまだ1万6400発があるとされ「廃絶できる」と言い切れない現実を前に、被爆者の複雑な心境を映し出す結果となった。
「はい」とする理由は「死ぬ思いで原爆に遭っている」(85歳女性)など、被爆体験に基づく願いから選択した人が多かった。「若い人たちと手をつないで、世界的に活動は広がる」(79歳男性)など次世代に期待する声も。
一方、「いいえ」とする理由は「国際間の駆け引きの最たるもの」(84歳男性)「核兵器を持っている国は手放さない」(77歳男性)など、核保有国との交渉の壁を挙げた。「被爆の惨めさを世界中の人々に知ってもらうのは困難であり、経験しないと分からない」(78歳女性)など、被爆体験を世界に伝える難しさを感じている人もいた。
「いいえ」「分からない」を選んでも「なくしてほしい」と書く人は多く、削減が大きく進まない国際社会への失望感と、廃絶をあきらめきれない思いがうかがわれる。

◎「核の傘」葛藤浮き彫り

日本は米国と軍事的同盟関係にある。日本が米国の核兵器で安全を保障してもらう「核の傘」(核抑止力)政策の是非について、44.8%が「分からない」と回答。中国の覇権的行動に脅威を感じている被爆者は少なくなく、「現実と願いの葛藤に苦慮する」(87歳男性)心境が浮き彫りとなった。
「分からない」では理由の記載が少ないが、「米国の傘の下にいるのが安全とは思わないが、中国などの核攻撃を想定した場合に生き残れるのか」(83歳男性)「何が本当に正しいのか」(73歳女性)-などと迷う声があった。「核の傘」について普段考える機会が少ない状況も想定される。
「はい(核の傘を続けるべき)」は27.6%で、「いいえ」の22.9%を上回る結果。肯定派には「今は良い。アジアの安泰が続けば、傘は徐々に必要なくなる」(84歳男性)と、恒久的な核抑止力依存は求めない声もあった。
「いいえ」では「核の傘は核保有と同意語」(79歳男性)「核の傘で守られていては、核廃絶を日本が唱えることは無理」(74歳男性)など厳しい指摘が上がった。

◎集団的自衛権、反対が過半数

安倍内閣が憲法解釈の変更によって閣議決定した集団的自衛権行使容認と今後の関連法整備に対し、戦争への道を懸念する反対派は半数だった。一方、「分からない」も3割に上った。難解で複雑な安全保障問題を前に、答えが出せない状況もあるようだ。
「絶対に推進すべきではない」は34・8%。「あまり推進すべきではない」を含めると反対派は51・8%。再び日本が戦火に巻き込まれるのではという不安がにじむ。安倍首相は今年の通常国会に、集団的自衛権行使に向けて関連法案を提出する方針。着々と進む手続きに「憲法の形骸化につながる。絶対に必要なのであれば憲法改正を提起し、国民の信を問うべき」(85歳男性)との指摘もあった。
「分からない」は29・4%。「難しすぎて」(85歳女性)「自国を守るためどうすればいいのか」(81歳女性)などで、集団的自衛権への理解は進んでいない。行使容認が戦争につながるのかどうか判断できない状況もあるようだ。
安倍首相は昨年12月の衆院選を受け、行使容認にも信任を得たとしたが、「積極的に推進すべき」は4・4%、「推進すべき」は9・8%で計14・2%。「戦争を行うのは絶対に反対だが、自国防衛のために必要」(81歳男性)など、中国の覇権拡大に対処の必要性を挙げる意見が目立った。