勧告「作業文書」 「核」禁止議論に手掛かり
準備委員会は9日、最終日となった。既に「勧告案」をめぐる攻防に基本的な決着がついているためか、開始前の議場は緊張感があまり感じられなかった。
採択されず議長名の文書となった2015年NPT再検討会議に向けた勧告「作業文書」は比較的短かった。当初、全会一致を優先したため踏み込んだ内容が少なく極めて弱いものになったことは理解できたが、全会一致を断念した後の改訂でも大きく変わらなかった。極めて残念なことだ。
作業文書では、核兵器の人道的結末に関し「核兵器のない世界を達成することに関連し各国政府や市民社会が出している新しい提案やイニシアチブについて検討すること」の一文を追加。核兵器禁止の法的枠組みの議論につながる今後への手掛かりと言えるだろう。
一方、核兵器禁止について「強固な検証システムに裏打ちされ明確な到達基準や時間軸を伴い、相互に補強し合う法的文書で構成された包括的な法的拘束力のある枠組み」の検討の重要性を指摘。法的枠組みに関し協議の場をつくる必要性を明確な文言で欲しかった。
準備委で米国は、NPTの3本柱(核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用)のバランス論や核軍縮のステップ・バイ・ステップの重要性など従来の主張を繰り返しつつ、非同盟諸国や市民社会との協議が有益だったとし、再検討会議での合意に向けたオバマ政権の積極姿勢をアピール。またNPT上の核兵器国(P5)による中央アジア非核兵器地帯条約議定書への署名を「重要な前進」と強調した。
「何も祝うことなどない」と厳しい口調で核兵器国批判を展開したのはキューバ。ステップ・バイ・ステップは現状維持にすぎないと述べ、来年の会議は特定の時間枠を伴う法的拘束力のある措置について具体的成果を生むべきだと主張した。メキシコも核兵器国の条約不履行を批判し、15年の成果が10年と同じであってはならないと述べた。
ロマン・モレイ議長は、準備委の議論が来年への重要な基盤となったことは間違いないとし、「コップの水は半分も入っている。半分しか入っていないのではない」と成果を強調した。
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報告は、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)の梅林宏道、鈴木達治郎、広瀬訓、中村桂子各氏が担当した。詳細はRECNAホームページ(http://www.recna.nagasaki-u.ac.jp/)の「NPT BLOG」参照。