福島へ 被爆地長崎の思い 6

被爆者と同等の援護を求めて提訴する「被爆体験者」。福島との連帯を掲げる=6月8日、長崎地裁

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福島へ 被爆地長崎の思い 6 福島へ 被爆地長崎の思い・6 内部被ばく 連帯を掲げる「体験者」 科学的な実態解明に期待

2011/08/04 掲載

福島へ 被爆地長崎の思い 6

被爆者と同等の援護を求めて提訴する「被爆体験者」。福島との連帯を掲げる=6月8日、長崎地裁

福島へ 被爆地長崎の思い・6 内部被ばく 連帯を掲げる「体験者」 科学的な実態解明に期待

6月19日昼前、福島県川俣町のスクリーニング会場に福島市の主婦、三浦順子(61)がマスクに帽子、長袖姿で現れた。片手にはタマネギやニンニクが詰まったナイロン袋。気温は25度を超えていた。「“被ばく野菜”をたくさん食べた。本当にがんになるのだろうか。今さら検査しても遅いが」
群馬県に住む長女からは「当分そっちに行かない」と言われた。長女には幼稚園に通う子どもがいる。三浦も「そうだよ、来たら“奇形児”になるよ」と相づちを打った。毎年、夫と育てた農作物を家族や友人に食べてもらうのが楽しみだった。「放射能が付いた野菜なんかだれも食べない。孫も来ない。楽しみも生きがいもすべてなくした」
◇ ◇
「福島県民の命を救うための裁判でもある」。6月8日、長崎地裁前。長崎の爆心地から12キロ以内の被爆未指定地域で原爆に遭った「被爆体験者」の14人が、県や長崎市を相手に被爆者健康手帳の交付を求め、追加提訴した。この日の第3陣で、同種訴訟の原告数は450人を超えた。
争点は「内部被ばく」。福島では放射性物質が警戒区域(20キロ)を超え、住民の避難は原発から北西部を中心に広範囲に及んでいる。さらに汚染による食物の出荷・摂取制限-。原告団は「われわれはわずか12キロ圏内で放射性物質が降り注いだ水を飲み、汚染された野菜を食べてきた。国の対応は明らかに矛盾している」と指摘。「今や内部被ばくは国民的な課題だ」と訴え、福島との連帯を誓った。
◇ ◇
「あれだけの事故が起きても、国や御用学者は健康に影響はないと繰り返す。内部被ばくなんか問題にもしていない」。放射性セシウムに汚染された肉牛が全国に流通したニュースが駆け巡っていた7月中旬、全国被爆体験者協議会長、小川博文(68)は憤りをあらわにしていた。「放射線の人体影響はすぐには分からないはず。たとえ微量でも幼児には危険だ。なぜ根拠もなしに影響はないと言えるのか」。小川は何度も首をかしげた。
2007年から順次提訴した第1陣訴訟395人のうち、既に18人が死亡。その多くが白血病やがんだった。「国は福島でも同じ過ちを繰り返し、被害者を抹殺しようとしている」。あの日、長崎上空を覆い尽くした原子雲の下で何があったのか。大詰めを迎えた第1陣訴訟で内部被ばくの実態を科学的に明らかにする。それが福島の未来にもつながる。小川はそう信じている。
(文中敬称略)