未来への1冊 被爆教師のメッセージ 3

「はだしのゲン」

ピースサイト関連企画

未来への1冊 被爆教師のメッセージ 3 大崎靜子さん(71)=西彼時津町野田郷= 「はだしのゲン」 歴史の真実 知ってほしい

2011/07/28 掲載

未来への1冊 被爆教師のメッセージ 3

「はだしのゲン」

大崎靜子さん(71)=西彼時津町野田郷= 「はだしのゲン」 歴史の真実 知ってほしい

大崎さんが薦めるのは1975年刊の漫画「はだしのゲン」(汐文社刊)。広島を舞台に軍国主義や原爆、戦後の暮らしがテーマ。戦時中、戦争に反対する市民は非国民とののしられ、差別を受けたことや、戦争で命を落とすことが「勲章」とされた時代が、分かりやすく描かれている。
この本は、大崎さんが小学校教諭のころ、受け持ちのクラスの学級文庫に置いていた。休み時間には子どもたちが争奪戦を繰り広げるほど人気があった。読み古されてぼろぼろになり、1年もたたずに買い替えたことが印象に残っている。
大崎さんは5歳の時、爆心地から約4・6キロの当時の大浦出雲町で被爆。友達の家で遊んでいた。爆音を聞いた友達のお母さんがたんすの陰に隠してくれて、無傷で済んだ。戦後は昼のサイレンが鳴るたびに、空襲や暗い防空壕(ごう)に避難した記憶がよみがえり、トラウマ(心的外傷)だった。
教師になって原爆や戦争のことを話すと、生徒から「先生はその時生まれていたの?」とよく聞かれた。まして今の子どもたちにとって戦争は、昔話のようなものと感じているのかもしれない。
「『はだしのゲン』は当時の世相も盛り込まれていて読みやすい。何よりそういう時代があったという事実だけは知っておいてほしい。詳しいことは分からなくても興味を持つきっかけにしてくれればと思う」