未来への1冊 被爆教師のメッセージ 2

「ながさきの子うま」

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未来への1冊 被爆教師のメッセージ 2 中村悦子さん(72)=長崎市梁川町= 「ながさきの子うま」 動物も植物も犠牲に

2011/07/27 掲載

未来への1冊 被爆教師のメッセージ 2

「ながさきの子うま」

中村悦子さん(72)=長崎市梁川町= 「ながさきの子うま」 動物も植物も犠牲に

中村さんは爆心地から約4・1キロの中新町で被爆。7歳だった。自宅の前で遊んでいて、原爆投下直前に落下傘(ラジオゾンデ)を見た。すぐ隣家に駆け込んだ。まぶしい光や爆音の記憶はない。覚えているのは浦上の町が夜通し、赤く燃えていたこと。そして鼻をつく強烈な臭気。後で死者を焼くにおいだと分かった。幼かった中村さんの記憶はその程度。今、親や祖父母は既に亡く、原爆について詳しく聞かなかったことを後悔している。

現在、碑巡りなどを通じて子どもたちに原爆の実相を伝えている。その子どもたちの多くもまた、祖父母が被爆者であっても被爆体験を聞いたことはないという。自分が後悔した分、「今の子どもたちにはできるだけ早く話を聞いてほしい」と強く願う。

薦めるのは1984年刊の「ながさきの子うま」(新日本出版社刊)。長崎原爆で母を亡くした子馬、いなさ号が主人公の物語。原爆投下前、いなさ号から「母さんて、戦争好き?」と問い掛けられた母馬は「好きな訳がありますか。馬は昔から殺し合いをしません。だけど私たちは人間に飼われているんですものねえ」と返す。

中村さんは「原爆の被害にあったのは人間だけでなく、動物や植物も一緒。人間の身勝手さが起こした戦争のために動物たちは犠牲になってしまった。そのことを本から感じて、二度と同じようなことを繰り返さないでほしい」と語る。