被爆66年 チェルノブイリを語る 中

地図を示し「チェルノブイリの放射性物質は広く拡散した」と語る朝長院長=長崎市茂里町、日赤長崎原爆病院

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被爆66年 チェルノブイリを語る 中 日赤長崎原爆病院長 朝長万左男さん(68) 放射性物質世界に拡散 核分裂は制御できない

2011/07/26 掲載

被爆66年 チェルノブイリを語る 中

地図を示し「チェルノブイリの放射性物質は広く拡散した」と語る朝長院長=長崎市茂里町、日赤長崎原爆病院

日赤長崎原爆病院長 朝長万左男さん(68) 放射性物質世界に拡散 核分裂は制御できない

「大変なことになる」。長崎大医学部の助教授時代、チェルノブイリ原発事故が発生した。「放出された放射性物質は原爆よりずっと多いはずだ」

恐れたのは長崎原爆の際、全身被ばくで骨髄の造血作用が侵され、多発した白血病。長年の研究分野だったが、チェルノブイリでは高線量被ばくの消防士らを除けば、大半が低線量被ばく。原爆の資料と照らし合わせ、白血病の心配はないと判断した。事故から2年ほど後にロシアであった国際会議で発表した。

その後の世界保健機関(WHO)を中心にした国際会議では「あまり大きな影響はないだろうと。ただし甲状腺は注意して見守る必要がある」ということだった。やがて子どもの甲状腺がんが急増する。

原発事故で出た放射性ヨウ素は、体内に入ると甲状腺にたまり、がんを起こすことがある。若いほど吸収されやすく、福島第1原発事故でも懸念の声が聞かれる。長崎原爆では被爆から3、4年後に子どもらの白血病が増えたがこの時期、甲状腺がんの例はない。なぜ甲状腺がんは長崎原爆で見られず、チェルノブイリでは急増したのか-。

本来、ヨウ素はコンブなど海産物に含まれる。チェルノブイリ周辺は地域的にヨウ素不足の食物環境で、子どもらの甲状腺が「ヨウ素欠乏症」だったため放射性ヨウ素を多く取り込んだという説がある。一方、長崎では食生活の違いから既に子どもらの甲状腺はヨウ素で満たされていて放射性ヨウ素を取り込まなかった可能性がある。福島の子どもたちも取り込みにくいことが想定されるが、その点を含め福島県の健康管理調査や甲状腺検査などで明らかにされるのではないか。

いずれにしてもチェルノブイリの事故は、世界的に放射性物質を拡散させ、局地的に放射線量が高い「ホットスポット」を生み出した。放射性セシウムは事故から25年でようやく半減期を迎えようとしているが、土壌の汚染は雨に洗い流されることなく固着。原発は世界にあり、また必ず事故は起き、汚染は進む。

原発事故は収束が容易ではなく、大衆被ばくや土壌・海洋汚染への効果的な対応策もほとんどない。人間社会が原子力を扱うには無理がある。チェルノブイリと福島は、技術的に核分裂をコントロールできないという結論を導き出したのではないか。