約束
 NPT再検討会議を超えて 下

林田君(右手前)に平和への思いを語る中学生=長崎市立滑石中

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約束 NPT再検討会議を超えて 下 複雑な世界 枠組みに不平等性、限界

2010/06/24 掲載

約束
 NPT再検討会議を超えて 下

林田君(右手前)に平和への思いを語る中学生=長崎市立滑石中

複雑な世界 枠組みに不平等性、限界

長崎市内で21日あった原水爆禁止日本国民会議(原水禁)の世界大会長崎実行委の学習会。ウェブサイト「核情報」主宰、田窪雅文さんは世界の核情勢について説明した。「核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成果は、最終文書を採択し、核不拡散体制の意義を確認したことと中東非核地帯に関する会議の2012年開催合意。ただし、イスラエルは出席しないとしている」

NPT未加盟で事実上の核保有国イスラエルに加盟を求め、中東会議の開催を盛り込んだ最終文書だが、同国は「未加盟国が会議決定に従う義務はない」と会議不参加を表明している。

NPTは、人類が核と核兵器を管理する上で非常に重要な枠組みだが、限界がある。

核兵器を保有する米ソなど5カ国を特別扱いした不平等性。脱退には罰則などの規制がない。NPT枠外でインドなどは核兵器を開発し、加盟国のイランには核開発疑惑がある。絡まり合った国際情勢、米国の核の傘の下にいる被爆国、核拡散や核テロの危険性が増す原発建設ブーム-。

「難しい」。学習会に参加した男性はつぶやいた。

米国で証言活動をした被爆者の一人はずっと考えている。「世界は混沌(こんとん)としている。被爆地は何ができるのか」

「被爆地」に核廃絶に関する強い求心力と発信力があるのは確かだ。例えば核廃絶のシンボル「ナガサキ誓いの火」が昨年から国際的な「ワールドピースマーチ」の主役としてトーチにともされ、手から手へ渡されて幾つもの国境を軽々と越え、長崎の「伝言」を世界に届けた事実は、被爆地のポテンシャル(潜在能力)を示している。潘基文国連事務総長が広島に加え長崎を訪問先として検討しているのも、被爆地の力に着目しているからだろう。

「米国人は被爆のこと知らないんだから、伝えなきゃ」。長崎市立滑石中で今月上旬、再検討会議に合わせて訪米した県立長崎北高3年の林田光弘君(18)が、中学3年生約190人に平和への思いを語った。意見交換では次々に手が挙がった。「世界の平和を考えたい」「次の時代は私たちにかかっている」「高校生平和大使を目指す」-。中学生の「決意表明」が続いた。複雑な世界が広がっていても、純粋に向き合おうとする被爆地の若者たちの姿がそこにあった。

同席した被爆者の田中安次郎さん(67)はこう語る。「私たちが巨大な核問題にアプローチできているかはよく分からない。でも被爆者であろうとなかろうと、被爆地からいろんな形で伝える努力を続けていく。まずは核廃絶に向けて、人類がもっと具体的な約束を結ぶまで」