核兵器と叡智
 NPT・ニューヨーク報告 6

積極的な発言が相次いだ北東アジア非核兵器地帯構想についてのNGO会議=米ニューヨークの国連本部NGOルーム

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核兵器と叡智 NPT・ニューヨーク報告 6 NGOの熱気 禁止条約交渉へ勢い

2010/05/21 掲載

核兵器と叡智
 NPT・ニューヨーク報告 6

積極的な発言が相次いだ北東アジア非核兵器地帯構想についてのNGO会議=米ニューヨークの国連本部NGOルーム

NGOの熱気 禁止条約交渉へ勢い

ニューヨークの国連本部で6日、米国の「核の傘」に依存する日韓と核兵器保有が指摘される北朝鮮の非核化を目指す「北東アジア非核兵器地帯」構想についての非政府組織(NGO)会議があった。

「核抑止に依存していては北東アジアの平和はない」。韓国NGOのスピーカー(弁士)、イ・テホさんはこう切り出し、北朝鮮の非核化を待つのではなく、日韓が核の傘を脱して非核化を進める「先制平和活動」が重要と指摘。ほかの参加者からも日韓で先に非核地帯宣言をすべきだという案が出たり、市民の質問も相次ぐなど熱を帯びた議論はNGOの底無しのエネルギーを感じさせた。

核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委など世界には多数の地域NGOがあり、各地の要望を吸い上げながら活動。幾つもの地域NGOなどで構成する国際NGOは、政府に要請して国家間交渉を促し、各国代表らにも働き掛けている。過去には対人地雷全面禁止のキャンペーンを張り、禁止条約の調印に結び付けた。

核兵器にも国際NGOは連携し、知恵と知識を出し合って対峙(たいじ)。2000年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議では、核保有国に核廃絶への「明確な約束」を表明させた「新アジェンダ連合」(7カ国)に強い影響を与えた。

国際NGOの主眼は核兵器の開発、実験、製造、使用などの禁止と廃絶に関する「核兵器禁止条約」交渉開始に向けての合意。活動は徐々に成果を挙げてきている。今回の再検討会議も情報紙などで速報。同会議NGOセッション(討論会)も開かれた。

再検討会議ではスイスやオーストリア、インドネシア、チリなど複数の国々が核兵器禁止条約に賛成の立場で言及。会議は核保有国と非核国、核開発にうごめく国々の駆け引きが複雑に絡み合い、展望が一気に開ける状況ではないが、オバマ米大統領の登場を背景に国際NGOは希望を抱いて活発に動いている。

さらに地域NGOや被爆者らの米国での平和行進アピール、懸命な被爆証言活動などは各国への有形無形の圧力となり、同条約への意識を一層高めているようだ。

米シンクタンク「ノーチラス研究所」のスコット・ブルースさん(32)は「核兵器は安全保障の脅威であって平和を守るものではないという考え方は確かに広がりつつある」と感じている。