核兵器と叡智
 NPT・ニューヨーク報告 4

被爆者(手前)の灯籠と日米の市民らのキャンドルが集まり、原爆や平和について考えた集会=米ニューヨークのユニオンスクエア

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核兵器と叡智 NPT・ニューヨーク報告 4 新たな認識 “平和の炎”思い共有

2010/05/19 掲載

核兵器と叡智
 NPT・ニューヨーク報告 4

被爆者(手前)の灯籠と日米の市民らのキャンドルが集まり、原爆や平和について考えた集会=米ニューヨークのユニオンスクエア

新たな認識 “平和の炎”思い共有

ニューヨークのユニオンスクエアで1日夜開かれた集会「ライトアップ・フォー・ピース 平和のために灯(とも)そう」-。

現地で核廃絶を目指している「ピカドン・プロジェクト」の西前拓さん(47)らが主催。灯籠(とうろう)やキャンドルを持った被爆者、ニューヨーク市民ら主催者発表で計300人が平和への願いを共有した。長崎の被爆者、故吉田勝二さんを描いた紙芝居も英語で初演された。当然のように米国メディアの姿はなかった。

西前さんは以前、言葉を交わした米国人ジャーナリスト、ビ0ル・モイヤーズ氏が自国の報道機関を「コーポレート・メディア(企業に飼われているメディア)」と憂えていたことを覚えている。「体制批判の弱体、調査報道の枯渇、売れるニュースしか報道しない姿勢など米国ジャーナリズムは瀕死(ひんし)の状態」というのだ。

米国の保守性を常に感じるという西前さんは「冷戦後、民主党もリベラルな政策を右寄りに転換し、オール右の状況が形成された。イラクやアフガン戦争への賛否の議論が世界で盛り上がったときでさえ『戦力をどこに割くか』『いつ撤退するか』など戦争の進め方の議論や報道が多かった」と語る。

しかし一方で、大手メディアの情報が巧妙にコントロールされているという感覚は既に一定の市民に浸透。正しい情報はインターネットを駆使するなどして自ら取りに行ったり発信するものだという新たな認識が広がっているという。

集会ではジョン・レノンの「イマジン」などを合唱。西前さんは、両手にキャンドルを持った参加者に呼び掛けた。「キャンドルの一つを通行人に渡してあげてください」

受け取らない人、無視する人、けげんな顔の人-。多様な反応の中、趣旨を聞いた老夫婦が手のひらで火を守りながら、ゆっくりと歩き去った。そして若い女性やカップルも。平和のメッセージを大事に持ち帰る一般市民の確かな良識を感じさせる光景が広がった。

米国メディアは、なぜ被爆者の動きを報じなかったのか。この点について次のような声も多く聞かれた。

「日本政府の首相や外相が核拡散防止条約(NPT)再検討会議を欠席している状況では、日本が核兵器廃絶を真剣に考えているのかどうか米国メディアには見えない。日本の首脳が出席してきちんと被爆や核廃絶をアピールすればメディアも被爆者を無視できなかったのではないか」