インタビュー 田上富久長崎市長(53) 核軍縮へ積極交渉を
核軍縮などに関して方向づけをする約190カ国加盟の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が5月3日から米国の国連本部で開かれる。会議に合わせ、田上富久長崎市長が渡米する。10年前の会議では伊藤一長市長に随行し、昨年の準備委では市長として各国政府代表らに「長崎を最後の被爆地に」と訴えた。今回は会議内のNGOセッションなどで発言する可能性がある。「核兵器なき世界」への胎動が感じられる今、被爆地のトップとして日本政府に何を求め、世界に何を伝えるのか。
-米国の「核の傘」に頼る被爆国をどう考える。
核の傘から脱し、非核の傘に入る「北東アジア非核兵器地帯構想」を長崎平和宣言で主張してきた。それが長崎の方向性。3月に岡田克也外相と会ったときもこの構想をスタートさせてほしいと申し上げた。外相は「北朝鮮の(核)問題などがのしかかっていて、解決しない限り進めない」と言ったが「日本は構想を目指す」というメッセージを発することが大事。
-核兵器廃絶に向けた日本政府の対応について。
日豪両政府のNPT再検討会議に向けた提案がまとまるなど、日本政府が待ちの姿勢から変化しているのは間違いない。踏み込んでほしい。会議では核保有国が誠実に核兵器を減らす姿勢を示さないと他国は納得しない。日本は核軍縮に向けて核保有国の首脳に積極交渉し、そしてもっと被爆の実相を世界に伝える努力をすべきだ。
-被爆地として何を提起するか。
「人類が核兵器をなくしました」という物語がつくられるとすれば、オバマ米大統領登場の章の次は、賛同する世界の市民が出てくるストーリーでなければならない。お手並み拝見では完結しない。オバマ大統領を長崎に呼ぼうとする運動も彼が被爆地からメッセージを発することは世界への影響が大きいから。
被爆地長崎が果たすべき役割を探っている。(断念した)2020年夏季五輪の長崎招致もその一つだった。(渡米に当たっては)核兵器は人間が持つべきものなのか、という根本的な疑問を突き付けたい。人類は核兵器を持つべきではなかったし、まして使うべきではなかったことを心にとどめ、発言したい。