ピースボート共同代表 川崎 哲氏(41) 全体会議「NPT再検討会議にのぞむ」コーディネーター オバマ演説具現化が焦点
5月に国連である核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、今後の核廃絶の流れを決する重要な交渉の場になる。(NPTの運用や改善策を話し合う)再検討会議そのものは5年に1度だが、前回は(不拡散強化策を優先させたい米国など核保有国と、核軍縮を重視する非保有国の対立で)決裂しており、実質的には10年ぶりだ。昨年はオバマ米大統領の誕生で「核なき世界」という言葉に躍った1年だった。それを実体あるものにできるかが今回の再検討会議の焦点だと思う。
1970年に発効したNPTは核の不拡散などで一定の役割を果たしてきた半面、条約ができるまでに核を保有していた米国、ロシアなど5カ国を特別扱いした不平等さが指摘されてきた。条約は5カ国に核保有を認める代わりに核軍縮を義務付けているが、実行されていないのが問題だ。
今回の再検討会議のポイントは三つある。まず、核軍縮に関しては(核保有国が核廃絶への「明確な約束」をした)2000年の合意に立ち返り、具体的な行動を取ることができるか。それから、非保有国が核を持てないよう、核兵器開発につながりうる技術、核燃料に関し規制強化で合意できるか。そして、インドなどがNPTに加盟していない「二重構造」の問題を解消するための話し合いが進むか否か、だ。
結局はNPT体制だけでは事態は解決できなくなっている。NPTの下で核保有国、非保有国の義務を強化していくのと並行し、核兵器禁止条約実現への交渉を始めなければならない。
問題は、再検討会議の前に各国がどんな方針を打ち出すかだといえる。私は活動で世界をあちこち回るが、「(米国の核抑止力に依存する)日本が核軍縮の障害になっている」との指摘をよく聞く。各国からそう見られている日本が核抑止政策を変えない限り、いくら鳩山由紀夫首相が「日本は核廃絶の先頭に立つ」と言ったところで国際的に信用されない。米国が新たな核戦略指針「核体制の見直し」を発表する前に、「日本は核の役割を減らしていく」という姿勢を明確に示し、再検討会議前の環境を良くしてもらいたい。
地球市民集会ナガサキの全体会議にはパネリストとして、海外の非政府組織(NGO)代表、被爆者に加え、外務省の軍縮担当課長も参加する。国際情勢に影響を与えられるこの好機に、被爆地でこうした議論、発信ができる意義は大きい。
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「NPT再検討会議にのぞむ-好機を生かすために」は8日午前10時~正午、長崎原爆資料館。聴講無料。
かわさき・あきら 東京都生まれ。2003年から国際交流のNGO「ピースボート」共同代表。日豪の賢人会議「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」ではNGOアドバイザーを務めた。主な著書に「核不拡散 軍縮の風は起こせるか」(岩波新書)。