長崎総合科学大准教授 芝野由和氏(59) 分科会「核兵器廃絶運動の継承と創造」コーディネーター 新たな「点」を「横」の連帯に
被爆者の思いを引き継ぐ「継承」と、平和や核兵器の廃絶に向けた独創的な試みをいかに「創造」していくか、ということをセットで考えたい。
「継承」されるべきなのは単に「被爆体験」ではなく、被爆者が戦後をどういった思いで生きてきたかも含めた「被爆者体験」だと思う。差別や偏見を乗り越え、展望を見いだそうとしたその半生を、戦後世代も(自分の生き方と重ねて)追体験することが大事だ。
「継承」が世代から世代へという「縦」の概念であるのに対し、「創造」とは出発は「点」だといえる。「縦」の「継承」から生じるさまざまな新しい「点」がどう交流し「横」の連帯に広げていくかだろう。
長崎では(インドやパキスタンの核実験強行を機に、核廃絶を願う被爆地の思いを世界に届ける)高校生平和大使や高校生1万人署名活動が生まれたり(高齢化する被爆者に代わって被爆の実相をボランティアで伝える)平和案内人が育成されるなど「継承」を担おうという動きはずっとつながってきた。そして、そういういろいろな「入り口」から入ってきた人たちが、どう横に広げていくかを模索しながら独自の試みを展開している。運動は進化している。
長崎総合科学大長崎平和文化研究所は毎年、付属高生を対象にしたアンケートで「核廃絶と平和のためにあなたができること」を尋ねている。「署名や集会への参加」の選択肢を選んだ生徒は、手元のデータで最も古い1992年が15・1%だったのに対し、昨年は(初めて3割を超え)31・1%だった。逆に「何かしたいが今のところ何もできない」は減少し(報道される)同年代の活動を見て、自分たちにできることがあると感じてきているようだ。
インターネットを使ったネットワークづくりだとか、いろいろな可能性はそれぞれの人たちが、ぼんやりとでも考えているかもしれない。その意味では、常識にとらわれない思考が必要だと思う。「ああ、こんなこともやれるのか」とか「こんな活動があるのか」ということを知らせていくことが大事だ。
ただ、こうした核廃絶運動は若者任せではいけない。いろんな世代、各層それぞれが担う役割を分科会で探りたい。国内外からのパネリストに活動のきっかけを話してもらうので「自分にもそれならできるかもしれない」ということを見つけてもらいたい。
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「核兵器廃絶運動の継承と創造-戦後世代の新たな取り組み」は7日午後2時~4時半、長崎市平和会館。聴講無料。
しばの・よしかず 愛知県生まれ。長崎総合科学大長崎平和文化研究所の運営主任。長崎市長が平和祈念式典で読み上げる長崎平和宣言の起草委員を2000年から務める。