ピースデポ特別顧問 梅林宏道氏(72) 分科会「『核の傘』を考える」コーディネーター 広げたい非核兵器地帯 被爆国こそ主導権を
非政府組織(NGO)関係者らが集まり、「核なき世界」への道筋を考える国際会議「第4回核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」が6~8日、長崎市平野町の長崎原爆資料館などで開かれ、一般市民も自由に聴講できる。実行委員長や分科会、全体会議のコーディネーターらに、核をめぐる現状や、それぞれのテーマ設定の狙いなどを聞いた。
被爆国の日本政府は「核廃絶の先頭に立つ」と言うが、実際は米国の「核の傘」(核抑止力)で守ってもらっている。「核のない世界へ」という新しいうねりの中で、それに代わるものがないのかを、もう一度考えたい。
米国の「核の傘」から日本が出ることは、安心感を失うような提案だと思われがちだが、核抑止力に依存せず、かつ、今より安全なやり方があることを理解してほしい。それは「非核兵器地帯」という概念だ。(該当する国々での核兵器の保有、開発などを条約で禁止する)非核兵器地帯を北東アジアにつくることで、日本も「核の傘」から出ることができる。
北東アジアでは、日本と韓国、北朝鮮を非核兵器地帯とし、この3カ国には核攻撃をしないとの「消極的安全保証」を周辺核保有国の米国、ロシア、中国が約束する「スリー・プラス・スリー」の形が最も現実的だと思う。
「まず北朝鮮が非核化されなければ話は進まない」との反論や、「日米安保条約を破棄しないと『核の傘』から出ることはできない」と言う人がいるが、決してそんなことはない。北朝鮮に関して言えば、こういう形での(6カ国間)条約が可能ではないか、ということを外交的なテーブルに乗せ、「安全の保証」を示すことで、北朝鮮も核を放棄しやすくなる。私は、北朝鮮が北東アジア非核兵器地帯の一員になることは可能だと考える。
まだ「北東アジア非核兵器地帯をつくろう」と言っている国はない。(鍵を握る)北朝鮮の出方を待つのではなく、日本からメッセージを発してほしい。国連で5月にある核拡散防止条約(NPT)再検討会議に日本が提出する文書に「日本は北東アジア非核兵器地帯を目指す」との文言が入れば、大きな飛躍になる。
米国と軍事同盟にあったニュージーランドは1987年に非核法を制定し、非核国家に転じた。政府や議会を動かしたのは市民の声だった。「被爆国こそ主導権をとって、こうした提案をしてほしい」との世論を高めることが必要だ。自治体も北東アジア非核兵器地帯を求める宣言をしてほしい。
分科会パネリストには犬塚直史参院議員や、韓国からも「核軍縮・不拡散議員連盟」を支援するNGO代表が参加する。北東アジア非核兵器地帯について、明確な次のステップを話し合いたい。
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「『核の傘』を考える-核兵器に依存する非核保有国の責任」は7日午前10時~午後0時半、長崎原爆資料館。聴講無料。
うめばやし・ひろみち 兵庫県生まれ。大学教員などを経て、1997年、NGO「ピースデポ」を創立。代表を務めた。「在日米軍」(岩波新書)などの著書がある。