県文化・スポーツ振興部長 藤泉氏(59) 都市機能 議論の契機に 目標、課題の洗い出しを
-長崎、広島両市の五輪招致表明について感想を。
率直に言って唐突で驚いている。こういう表明は市役所内や行政機関同士で情報を共有し課題を抽出した上で提案するのが常道だが、そういうプロセスを経ずに出てきた。冷静に考えると、平和の象徴としてオリンピックを生かす考えはもっともだしスポーツ振興上も有意義だと思う。
-田上富久市長はイベント会場で金子原二郎知事に考えを明かしたようだが、県にこのような形で意向を伝えるやり方に異論はないか。
こういう大きな仕事をするためにはプロセスが重要だ。それを考えれば賛同や共感を得るための手だてとしていかがだったのか。市長なりの考えはあったと思うが、一般的に言えばきちんとした形で話があってもよかった。
-そのような状況で今後協力してやっていけるか。
大事なのは行政機関や競技団体、市民と課題を見つけ皆さんでやっていく姿勢を出せるかだと思う。そのためには信頼関係が重要で、それを築くには情報の共有化が前提となる。そのシステムをどうつくるかが大きな要素だと思う。
-県としてどのような協力ができるのか。
今のところ長崎市から具体的要請がない。これから市が実現可能性を調査すると思うので、その結果が出ないと見えてこない。
-施設整備など長崎市が直面する課題は多い。
長崎市内のスポーツ施設は競技者から必ずしも満足されておらず、国際大会を誘致するにも十分ではない。施設整備に加え交通や宿泊など幅広い対応が必要で都市政策の大きな課題にぶつかる。オリンピックとなれば選手だけでなく応援団など来る人の規模が違う。市内には都市ホテルが少なくいくつかの種目を実施するにしても選手をどこに宿泊させるか課題だ。
-オリンピック招致議論に意義はあるのか。
都市機能の課題を洗い出し、市の政策として国際スポーツコンベンション機能を持つ都市を目指すのか議論すべきだ。単に「都市機能をチェックしたら無理だった」では意味がない。国際大会を誘致し被爆の実相を知ってもらい核兵器廃絶を目指すのが市の大きな狙い。オリンピックが誘致できるに越したことはないが、国際試合を誘致することで大なり小なりその狙いは達成できる。これを機に、国際スポーツコンベンションをしながら平和を世界に伝播(でんぱ)する政策を組み立てられれば意義深い。
【略歴】ふじ・いずみ 1973年4月に県庁に入る。総務部秘書広報課広報室長や政策調整局都市再整備推進課長などを経て2006年4月から文化・スポーツ振興部長を務める。県美術館と長崎歴史文化博物館の構想段階から開館まで一貫して担当している。