長崎商工会議所会頭 松藤悟氏(80) 新たな形の大会提案を 客船を宿泊施設に利用も
-招致をどう思うか。
最初に感じたのは「本当か」という驚き。(核兵器廃絶に向けた)平和都市として共催したいという理念は賛成で、広島、長崎両市が提案した意義は大きい。ただ、招致するための資金面の問題は大変なこと。課題があまりにも多すぎる。
-課題は。
(五輪憲章で認められていない)共催を可能にできるかが、最初の関門。五輪の考え方を根本的に変えなければならない。大会に向けて施設を整備する従来の都市型五輪では、両市は対応できない。どういう形が理想なのかは想像できないが、これまでと違う「新しい形の五輪」を提案する必要がある。
-宿泊施設など受け入れ態勢の問題は。
あれだけの選手、観客を受け入れるのは大変で、簡単に解決できない。ただ、可能かは別として、(長崎港に)客船をとめて宿泊施設にするのは一つのアイデア。一時的に何千人もの宿泊先を確保できる。五輪を契機に新しい事業が生まれればいいが、むやみに宿泊施設を増やし、五輪後に使われなければ困る。
-招致が、九州新幹線長崎ルートなど基盤整備を促進するという声もある。
五輪に関係なく、新幹線は長崎に必要だと考えてわれわれは取り組んでいる。ただ、政権交代で整備の先行きは見えにくくなった。招致するためには基盤整備は必要で、いろいろな問題が片付くかもしれない。
-経済効果は。
計り知れない効果がある。多くの人が長崎を訪れ、施設整備も進む。平和都市として世界中に知ってもらえるので、五輪後も(観光で)訪れる人は増えるはず。ただ、招致への課題は山積みで、単純にプラス面だけでは考えられない。開催までの約10年間は、準備費用が必要で、効果を得るまでの時間は長い。
-広島経済界とのつながりは。
広島市の商工会議所と特別な付き合いはない。招致活動が具体化すれば、当然、経済界の交流も深まっていくだろう。北部九州で協力して進める話も挙がっているので、招致運動を経験している福岡市には、知恵を借りていくことになるかもしれない。
-両市が設置する招致検討委へのかかわりは。
(経済界から)提案するべきことはあるので、要請があれば、前向きに考えたい。
【略歴】まつふじ・さとる 松藤商事(長崎市)を中核とする松藤グループ代表。2004年から長崎商工会議所会頭。県商工会議所連合会会長、県トラック協会会長、長崎・ノルウェー友好協会会長などを務める。