財団法人ながさき地域政策研究所常務理事・調査研究部長 菊森淳文氏(54) 世界へ発信のチャンス 負担軽減に知恵を絞れ
-招致をどう思うか。
基本的に賛成。五輪招致はインパクトが大きい。平和をはじめ、観光、自然、歴史、文化などさまざまな面で長崎を世界に向けて発信できるチャンス。仮に開催が実現しなくても、招致活動によるアピール効果は大きく、マイナスのインパクトはない。
-長崎、広島で開催する意義は。
4月のプラハ演説で「核なき世界」を目指すと明言したオバマ米大統領がノーベル平和賞を受賞した。核兵器廃絶への機運が高まる中で、二つの被爆都市が「平和の祭典」の招致に手を挙げたことは非常にいいこと。開催できれば、核廃絶・恒久平和の実現を目指す両都市の存在を世界に再認識してもらう大きなチャンスになる。五輪の期間中あるいは前後に、平和をテーマにした国際的なミーティングを開いたりすれば、世界の多くの人が平和について考える機会となり、被爆地五輪は本当の意味で平和の祭典になるのでは。
-経済効果は。
算定は難しいが、相当大きくなると思う。地域活性化や経済の浮揚が期待できる。ほかの都市と連携し、準備を進めていくのであれば、長崎、広島両市にとどまらず、広い地域の発展につながる。
-観光振興への期待は。
世界中から人々が集まるので観光関連産業にとってはまたとないチャンスになるだろう。ただ、観光客を受け入れるための態勢づくりは必要。国際観光客が求めるのは自然、食、長崎独特の歴史や文化であり、それらを楽しんでもらう観光メニューづくりや観光ガイドの養成が重要になってくる。そのためには県民の協力も欠かせない。
-課題は。
招致活動をはじめ、スポーツ施設や選手村の整備、交通機関、道路、宿泊施設などのインフラ整備、治安維持などにはどうしても金がかかる。その負担をどうクリアするかだ。
-解決策はあるか。
事業として採算性がないと開催は難しく、財政負担を懸念する県民の理解も得られない。五輪が終わったら使われなくなるような“ハコモノ”をたくさん造るのではなく、既存施設を活用したり、周辺の複数都市に施設を分散させるなど、負担軽減のために知恵を絞らなければならない。長崎、広島両市は招致活動を進める中で、各方面の協力を得て、さまざまなノウハウを吸収していく必要がある。
【略歴】きくもり・あつふみ 三重県出身。東京大法学部卒。1978年三井銀行(現・三井住友銀行)入行。2004年から現職。日本総合研究所調査部社会経済政策研究センター主席研究員も務める。