リムピース編集委員 篠崎正人氏(62) 信頼基礎固めに有効 市は「うそ」の責任問われる
〈核密約調査による日米安保と、基地の街佐世保への影響は〉
核密約の調査は日米間の信頼の基礎を固める上で有効だ。安全保障に対する国民の信頼も高まるだろう。
外交には秘密事項はあるが、少なくとも国会には正確なことが伝えられてこなければいけなかった。ベトナム戦争中は佐世保に年間30隻の空母が入港しており、明らかに核兵器が積まれているであろう船もあった。核は日常的に持ち込まれていたはずだ。
現在、米軍艦船は戦略原潜を除いて核を積んでいないと思われる。ただ核密約の関係で、日本では米艦船が核を搭載していないと信じてもらえなかった。結果として核兵器に関する国民の対米不信が延々と続いた。密約が明らかになれば、それが解消される。
密約が明らかになった場合、政府は密約を破棄した上で、非核三原則を国会決議に高めるような努力をする必要がある。今後は三原則に沿い、核持ち込みの際は事前通告することをあらためて確認するだけでいい。
米側にも不都合はないはずだ。米の戦略は大規模地域紛争や対テロ戦争を想定しているが、そうした戦場で核を使用することはあり得ない。経済交流がこれだけ深まっている中、(核攻撃による)一つの国の崩壊は東アジアでは地域全体の崩壊につながる。常時攻撃に使える核兵器は艦船では戦略原潜以外は搭載しておらず、米側の選択肢としても現実的にはない。
「核密約の調査は日米間の信頼の基礎を固める上で有効」と話す篠崎氏=佐世保市内
核の傘による安全保障は手段として放棄されなければならない。日本政府はこれまで、昔から引き継がれた核抑止論を否定できなかった。政権交代で変えることができるチャンスがきた。
基地の街佐世保での最大の問題は、佐世保市長が市民に結果としてうそをついていたのではないか、ということだ。
市は「核兵器は積んでいない」という政府を信頼して米艦船の入港を認めてきたが、危険物の持ち込みを調査する権限は港湾管理者(市)が持っている。特別な爆発物を持っての入港は拒否できる。確認はできなくとも、どのような危険物を搭載しているか問い合わせはできたはずだ。
市として態度を明確にした上で、国の判断として入ってくるというのであれば、少なくとも市民にうそをついたことにはならない。そういう努力をしていなかった点で、市は責任を問われるのではないか。自らできることをやらずに「国がうそをついていた」というのは市民への説明にならない。
今後、日米地位協定と地方自治体の権限の整合性をどうとるか、自治体としての能力が問われる。
【略歴】しのざき・まさと 1980年、佐世保軍事問題研究会発足に参加。以降、米軍・自衛隊や艦船の入港状況を監視。96年、在日米軍監視団体「リムピース」結成に参画。長崎大非常勤講師。