長崎被災協事務局長 山田拓民氏 長崎の運動に課題
〈米印原子力協力協定をめぐる一連の動きに対する被爆地からの行動は十分だったか〉
(核燃料や技術などの輸出を管理する)原子力供給国グループ(NSG、日米など四十五カ国)が、核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドへの禁輸措置解除を特例扱いで認めたと知ったときは、理解できなかった。日本が米国に追随するのは分かっていたが、(インドへの特例扱いを懸念するアイルランド、スイスなど)一部の国が反対し、(全会一致が原則のNSGでは)承認されないだろうと思っていたからだ。被爆国の日本が容認の姿勢を見せたことが、全体の雰囲気を変えてしまったのではないか。
福田首相は今年八月九日の長崎平和祈念式典の来賓あいさつで、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向けて国際社会の先頭に立つと約束した。舌の根が乾かないうちに、とはこのことだ。言うこととやることが全く違う。NSGの承認は、単に米国とインドが目指している原子力協力協定を認めるという次元の話ではなくて、築き上げてきたNPT体制が壊れるかもしれないという深刻な問題だ。
今月、東京であった(上部団体の)日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表理事会で、今回の問題に関する点検をやった。被団協の全国の構成組織で、声明や抗議文を出したのは長崎と広島だけだった。(NSGが承認する前に)各地の被爆者団体に行動を呼び掛けてもよかったし、長崎でも集会や勉強会を開くとか、(問題の深刻さを理解してもらうため)もっと市民、国民に分かりやすい動きをするべきだった。
米国で核政策の中心にいたキッシンジャー元国務長官ら元政府高官の四人が昨年、今年と米紙上で核兵器全廃の実現を提唱した。(核大国の米国から出てきた)こうした新しい動きと連帯して、広げていくことが大事だ。まず、被爆地である地元(の意識)を変える、次に九州を変えていくという責任が長崎にはある。
長崎市では来年、(国内外の二千四百十都市が加盟する)平和市長会議の総会が開かれるが、県内では半数の自治体しか入っていない(加盟率52%、今月一日現在)。同じ被爆地の広島県より少ない。(二〇二〇年までに核兵器廃絶を目指すという同会議の)「二〇二〇ビジョン」をきちんとしたものにできるかの瀬戸際。県内の未加盟自治体に対しては何らかの形で参加を求めていきたい。今回の問題では、(被爆地からの運動について)課題を背負った。やらなければいけないことはいっぱいある。