北朝鮮 「核実験」の衝撃
 =揺れる長崎= 下

核廃絶を目指す国際会議を前に開かれた市民対話集会=1日、長崎市平野町の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

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北朝鮮 「核実験」の衝撃 =揺れる長崎= 下 被爆地の憂い 「核武装論」を警戒

2006/10/12 掲載

北朝鮮 「核実験」の衝撃
 =揺れる長崎= 下

核廃絶を目指す国際会議を前に開かれた市民対話集会=1日、長崎市平野町の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

被爆地の憂い 「核武装論」を警戒

「最も懸念されるのは、核を持ってもいいではないかという意見が一部で台頭しつつあることだ。とんでもない話だ」

長崎市長の伊藤一長(61)は、九日の記者会見で強い調子で語った。

一九九九年十月。当時の防衛政務次官が「核武装論議を始めるべきだ」との見解を雑誌上の対談で示すと、波紋が広がった。被爆地長崎からも非難の声が上がり、次官が更迭されると伊藤は「当然」と切って捨てた。

北朝鮮が複数のミサイルを発射した今年七月、被爆者・平和団体の人たちは比較的冷静な反応を見せた。理由はいくつかあったが、ストレートに北朝鮮だけを批判すると、日米両国が進めるミサイル防衛(MD)のような”武装強化”に拍車が掛かりかねないとの懸念もあった。

長崎原爆被災者協議会事務局長の山田拓民(75)は「国が戦争のできる体制づくりを進めている」と危機感を隠さない。山田が意識しているのは、全国の自治体が作成を進めている有事対応の国民保護計画。「北朝鮮の核実験に過剰反応し、国民の間で『備えあれば憂いなし』の雰囲気が強まりかねない」と話す。

実際、北朝鮮が核実験を「実施」した九日、県は既に作成した保護計画に基づき担当職員を緊急招集、情報収集・提供に当たった。しかし、計画は武力攻撃への対処を規定しているが、核実験は想定外。県は「今回の事態に対応できる最も適切な体制を選んだ」としている。

国際情勢に詳しい元長崎大学長の土山秀夫(81)も、核武装論のような発想を警戒するが、北朝鮮が三日に実験を予告した声明に、いまの危機的状況を突き崩すヒントを見いだしたという。

声明は「われわれの最終目標は一方的な武装解除につながる『非核化』ではなく、朝鮮半島と周辺からすべての核脅威を根源的に取り除く非核化だ」としているが、核実験を実施した国の言い分としては自己矛盾している。

だが土山は「北朝鮮を徹底的に追い詰めれば暴発しかねない。それより北東アジアの非核兵器地帯構想が抜本的な解決策になる」と話す。

北朝鮮の言う「非核化」と、土山の「非核兵器地帯」は「符合する」(土山)。

今月二十一日から三日間、長崎市内では核廃絶を目指す国際会議「地球市民集会」が開かれる。そこには世界各国の非政府組織(NGO)が集結する。集会実行委員長の土山は「世界の人々と連帯を強める大きなチャンス。被爆地の市民の情熱が彼らのパワーにもなる」と期待を込めた。(文中敬称略)