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北朝鮮 「核実験」の衝撃 =揺れる長崎= 上 拡散に危機感 平和運動と裏腹に

2006/10/11 掲載

拡散に危機感 平和運動と裏腹に

核実験を実施した―。九日の北朝鮮の発表は、一瞬にして北東アジア情勢に緊張をもたらし、朝鮮半島に近い本県にも衝撃が走った。被爆者、行政、平和運動関係者はどう受け止めたのか。緊急リポートする。

九日。原水爆禁止長崎県民会議(県原水禁)副会長の川野浩一(66)が自宅に戻ったのはちょうど正午だった。

「北朝鮮が核実験をしたみたいよ」

妻の一言に思わず「えーっ」と声を上げた。居間に置かれたテレビのニュースがその事実を伝えていた。

川野はこの日午前十時半から一時間、長崎への原爆投下日の八月九日にちなんで毎月九日に平和公園で行っている「反核9の日座り込み」に参加した。核実験実施の情報はまだ伝わっておらず、そこでは、北朝鮮が三日に予告した核実験の中止を求める決議を採択した。

「北朝鮮が核実験のカードを切ることは許されない。しかし、解決の糸口を見つけないと事態はますます悪くなるのではないか」。被爆者でもある川野は座り込みの参加者に向かって訴えた。

川野は一九四〇年、父の仕事の関係で当時日本の植民地だった朝鮮半島で生まれた。場所は今の北朝鮮の平安北道。一歳半まで住んでいたらしいが記憶はない。一度は北朝鮮に行ってみたいと思っていた。

その機会が訪れ、原水禁による北朝鮮在住の被爆者実態調査で四日に関西空港をたつ予定だった。しかし―。前日の三日に北朝鮮が実験を予告。断念した。

原水禁は、北朝鮮の朝鮮労働党と友党関係にあった旧社会党系だ。それも影響しているのか、川野は北朝鮮へのシンパシーが「どこかにある」と話す。

「北朝鮮は米国に『ならず者国家』と言われ経済制裁で追い詰められてきた。一方で米国はどんどん核開発を進め、インドやイスラエルの核保有を事実上認めているではないか」

北朝鮮の核実験に対し、川野は核爆発に伴う地震波が思ったほど大きくなかったことから、北朝鮮が本当に実験をしたのかどうか懐疑的だ。だが自分たちの運動とは裏腹に、核拡散が進んでいる国際情勢には危機感を覚えている。

座り込みの九日は三連休の最終日。平和祈念像前で黙々と座り続ける川野らのそばで、祈念像のように右手を上に、左手を水平に伸ばし、写真に納まる観光客の姿も多かった。

川野は言う。「以前も上半身裸で祈念像のまねをして写真を撮る人がいた。そんな光景を見ると悲しいよ。米大使館に抗議文を送っても紙くず同然に扱われているかもしれない。でもね、何ができるかというと座り込みしかないんだ。参加しているのは高齢の人が多い。自分の子や孫には悲惨な体験をさせたくないと思っているはずだよ」(文中敬称略)