実行委世話人 平野伸人さん 取り組みを将来の糧に
被爆地長崎で、若者の平和活動の象徴的な存在となった高校生一万人署名活動実行委。その世話人として毎年約百人にも上る生徒たちを見守っているのが長崎市内の小学校教諭、平野伸人さん(59)だ。活動の意義や若者に託す思いを聞いた。
―国連欧州本部で平和を訴える高校生平和大使と一万人署名の活動のきっかけは。
高齢になった被爆者から「若い人に活動を引き継ぎたい」との声が上がるようになった。私も「平和を訴えることは長崎の子どもの役割」と考え、一九九八年に平和大使を始めた。初代平和大使を含め、高校生十人ほどが「自分たちも何かやろう」と二〇〇一年に立ち上げたのが署名活動実行委だった。平和大使をきっかけに彼らが自主的に活動してくれればと内心では思っていたが、口には出さなかった。長崎の子どもとしての必然性だったと思う。うれしかった。
―高校生が活動する意義について。
大人からの規制を受けずに伸び伸びと取り組める。また、大人であり、子どもでもある高校生が自分の考えをつくるときに、社会性を反映させることができるようにもなる。
―高校生に期待することは。
長崎の平和活動を被爆者らから継承することと、社会の出来事に関心を持ってもらうこと。「中学の先輩が入っていたから」「テレビで見て面白そうだったから」という理由で活動を始める高校生もいる。しかし、きっかけは何であれ、それから活動に没頭すればいいと思う。
―高校時代は活発に活動しても、卒業後、同じように動けない若者も多い。
私も東京の大学に進学した。田舎に思えた故郷とは距離を置きたかったし、自然と忘れていった。今の高校生も進学や就職でそうなると思う。卒業後も平和活動を続けるかどうかは人それぞれでいい。だが、高校時代に一生懸命取り組んだことを将来の糧にしてもらいたい。
―署名活動のOBにメッセージを。
長崎は原爆や平和と切り離すことができない都市。それは忘れないでほしい。皆それぞれ性格は違うし、活動方法も異なった。でもそんな様子を見ていて楽しかった。卒業した後にどんな道を歩もうと、長崎で生まれ育ったという誇りを胸に頑張ってほしい。
<被爆六十一年を迎えた今年、高校生平和大使は九代目、一万人署名活動は六回目となる>