筑波大4年 草野史興さん 世界の若者に伝えたい
「平和には難しいイメージがあるかもしれないが、いじめのような身近なことから平和を考えてほしい。友人と仲良くすることは世界平和につながっていきます」
六月中旬、東京都内の高校の教室。そこには高校時代の平和活動も交えながら熱心に語り掛ける筑波大四年、草野史興さん(21)の姿があった。
真剣なまなざしで草野さんの言葉を受け止める生徒たち。「高校生で核兵器廃絶に取り組むなんてすごい」「私もやりたい」。講演後に驚きと共感の声が上がった。草野さんの「思いが伝わった瞬間」だ。
高校生で平和活動に目覚めた草野さんは、大学入学直後に挫折を味わっていた。以前のようにキャンパスで署名を集めたが、被爆地長崎のような好意的な反応は少なかった。知らない人、知らない土地の中で、一人で活動することに恥ずかしさも感じ、すぐにやめた。
二〇〇三年、大学一年の夏休み。草野さんが高校生平和大使だったことを知った福岡県の小学校から招かれ、講演した。国連欧州本部で平和を訴えたこと、バチカンでローマ法王に面会したこと。話し終えると一人の児童が近寄ってきて言った。「平和大使ってかっこいいね」
この何げないひと言が、半年前のある出来事を脳裏によみがえらせた。
高校卒業を間近に控え、米国の大学生と核兵器廃絶を議論するため友人と渡米した。そこでは若者がイラク戦争に反対するデモ行進をしていた。「どう思う?」。そばにいた米大学生に尋ねると、「リスペクト(尊敬する)」と返ってきた。
「かっこいい」「尊敬する」。平和活動に抱いていた気恥ずかしさは消え去り、半年間のブランクを乗り越えて、再び活動する自信がわいた。
夏休みが終わり、大学そばの喫茶店で友人やお年寄りに原爆のことを語った。初めて耳にする被爆の実情に「貴重な話だった」と感想が上がった。活動を続ける必要性を、あらためてかみしめた。
「昔の学生運動のように危険、政治的といった印象を持たれている。一般市民にも受け入れられるソフトな感じにしたかった」。平和活動の“イメージ改革”にも取り組んだ。高校時代の仲間と一緒に、好きなことを自由に書いてもらう「I〓(アイラブ)カード」を考案、街頭で配った。それを集めて各地で展示会を開いた。
「出会った人たちから預かった核兵器廃絶と世界平和への思いを無駄にするわけにはいきません」。今も大学の講堂や全国各地の学校で平和を訴え続ける。「世界の若者に伝えていかなければと思ってます」