本島等 元長崎市長 「日本はどんどん右傾化」
中国や韓国で日本の歴史認識を批判する行動が相次ぎ、本県など九州の自衛隊員もイラクへ派遣された戦後六十年。今も「戦争」と向き合う人を追った。
「戦争が終わったとき、みんな『これで世界平和は達せられる。平和を乱す国は出てこないのだ』と考えたが、日本はどんどん右傾化している。そのうち来ると思っていた振り戻しがあったのかどうか。自衛隊の海外派兵も実施され、『憲法は自衛権も否定していたんだ』と言わなくなった。もう一回戦争をしないといけないような時代になっている」
■節目と情勢
「天皇の戦争責任」発言で知られる本島等元長崎市長(83)は日本の現状をこう表現する。中国や韓国で日本に対する抗議行動が起きた原因については「日本が歴史認識をきちんとしていないからだ」ときっぱり。
今年は韓国や英国のメディアの取材を受けたり、外国特派員協会や早稲田大などでの講演、日中問題を討論するシンポジウムなどで考えを求められる機会が引きも切らず続いている。節目であることと、社会情勢が出番を多くしているようだ。そこでの言葉は「戦争がなければ原爆が投下されることもなかった」「開戦も終戦も天皇が告げた。道義的責任がある」「A級戦犯だけでなく一兵士や市民にも大小にかかわらず責任があった」「日本が迷惑を掛けた国に市民として心から謝りたい」に集約される。
■根強い人気
国と三菱グループ二社などを相手に損害賠償を求めた長崎の中国人強制連行裁判を支援する会の会長を引き受けたのも、戦時中に熊本の教育隊で若い兵隊に大砲の撃ち方を教えた自身の「戦争責任」からだ。
「日本人は戦争が好きだった」が持論。忠臣蔵や新選組を題材にした番組が今も根強い人気を持っていることを引き合いに、「底流では変化はないのではないか」。
最近、原爆投下に対する世界の人々の受け止め方を小さな冊子にまとめた。表題は「原爆投下は正しかったか 戦争の加害責任を考えずに核廃絶を語れない」。月刊誌に発表した分をまとめた。
■外国の見方
この中で「日本人は敗戦の日から自国の過去の罪業を忘れ去り、平和の使徒となって『われわれは戦争の犠牲者』と叫んできた。だが諸外国は原爆投下を全く別の見方をしている」と記した。発表後、批判的な感想も寄せられたが「この本に書いている一つ一つは否定できない」と言う。
十五日には韓国ソウルで「過去から学び、平和な未来を創(つく)るために」をテーマに開かれる韓日平和フォーラムに出席、こんな話をするつもりだ。
「今から百年たって第二次大戦のいろんな問題が論じられるとき、『ドイツ、イタリアにもレジスタンスがあり、韓国にも決して引けを取らない三・一独立運動があった。日本には治安維持法があって仕方なかったかもしれないが、なかった』と言われるだろう」