嘉代子桜の碑 (長崎市城山町、建立1966年7月) ◆ 母の祈り 苗木に託す
「嘉代子桜」は、原爆で約千四百人の児童らが犠牲となった長崎市城山町の市立城山小(当時は城山国民学校)の校庭東側の一角にある。
県立高等女学校の四年生だった林嘉代子さん=当時(15)=は、学徒報国隊員として同校で勤務中に被爆し、亡くなった。母親の津恵さんは、娘の亡きがらを何日もかけて捜し出し、四年後、娘が好きだった桜の苗木を校内に植えた。
「嘉代子桜の碑」は高さ一メートル、桜の由来と平和への願いを語り継ぐため、当時の教職員らが木のそばに建てた。
城山小では、通常の平和学習に加え、毎月九日の「平和祈念式」の一環として、学年ごとに設定したテーマを一年間かけて学ぶ。一年生のテーマは「嘉代子桜」。学級担任の西郷隆宣教諭(39)は「戦争、原爆のむごさや親子のきずなを、少しずつ理解させたい」と話す。
「かよこざくらは、かよこさんのおかあさんがうえました」―。幼い文字が平和への思いをつづる。「あの日」から六十年後を生きる子どもたちの成長を”あの子”が好きだった桜の木が見守っている。