核大国に挑んで
 =NPT会議ニューヨーク報告= 3

真剣な表情で被爆者の証言に耳を傾ける来場者=3日、国連本部

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核大国に挑んで =NPT会議ニューヨーク報告= 3 国連原爆展 来場者に深い衝撃

2005/05/23 掲載

核大国に挑んで
 =NPT会議ニューヨーク報告= 3

真剣な表情で被爆者の証言に耳を傾ける来場者=3日、国連本部

国連原爆展 来場者に深い衝撃

ニューヨークの国連本部ビル一階ロビーの一角。米国人の女性がテーブルの前にしゃがみ込んで、日本被団協委員、平田道正さん(69)=東京在住=の証言に耳を傾けていた。青い瞳に涙が浮かび、しきりにすすり上げている。

ニュージャージー州の高校教師、スーザン・マクローランさん(41)。生徒四十五人を引率して、毎年恒例の「国連見学」にやって来た。去年と違っていたのは、核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせ、ロビーで日本被団協主催の原爆展が開かれていたことだ。

「まさかサバイバー(被爆者)と会えるなんて思ってもいなかった。感想? とても一言では言えない。ただ、私にも、生徒たちにも、とても特別な日になった」。マクローランさんは静かに話した。

原爆展の会場は、一階と地下の二カ所に用意された。広島、長崎の被爆者が交代で待機し、来場者の求めに応じて自らの体験を語っている。「あまりに残酷な印象の写真展示は認められない」とする国連側との調整が難航し、開催構想から実現までには、何年もの時間がかかった。

見学者たちが次々に足を止める。「初めて見た」「信じられない」「言葉がない」―。”サバイバー”たちの圧倒的な存在感と相まって、焼け野原になった市街地や立ち尽くす少年の写真は、訪れる人々を確実に揺り動かしていた。

「もちろん大きな一歩だとは思う。ただね。ここに来る人は、もともと国際平和とか戦争とか、核兵器廃絶に何かしら関心のある人ばかりなんですよ」

通訳を介しながら外国人の来場者に体験を語っていた大岩孝平さん(73)が言った。十三歳の時に広島で被爆。東京在住の被爆者でつくる「東友会」の常任理事を務めている。

「そんな人たちでも、こんなに驚くのは、知らない人が多いことの裏返し。だから私たちは、もっといろんな人に話さなければいけない。これが自分の身に起きたとしたらどうですか―と」

ようやく開催にこぎ着けた原爆展は、被爆者たちに核兵器廃絶の訴えへの共感と、被爆の実相に対する世界の”無知”を一度に実感させていた。だから、彼らの多くは、申し合わせたように話の終わりにこう付け加えた。「私ときょう会ったことを、少しでもたくさんの人に伝えてください」