今、9条を語る
 =憲法論議の中で= 4

「日本の歴史、伝統を大切にする若い人たちの心をはぐくむ憲法にしてほしい」と話す下條洋二さん =長崎市内

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今、9条を語る =憲法論議の中で= 4 下條洋二さん 真の平和目指す規範に

2005/04/30 掲載

今、9条を語る
 =憲法論議の中で= 4

「日本の歴史、伝統を大切にする若い人たちの心をはぐくむ憲法にしてほしい」と話す下條洋二さん =長崎市内

下條洋二さん 真の平和目指す規範に

「GHQ(連合国軍総司令部)に押し付けられた憲法であり、これまで論議すらタブーだった。さまざまな国民の意見を生かした日本自身の憲法を作ることができる」。五年にわたる論議の末、報告書を提出した国会の憲法調査会の成果を歓迎する。

単に文言を変えただけの新憲法を望んでいるわけではない。「日本の長い歴史を踏まえた民族の伝統、文化を生かした憲法を求める。日本人が生まれ育った観点から国を守るのが基本だ」

憲法調査会の最終報告は、自衛権と自衛隊は「何らかの憲法上の措置を取ることを否定しない」との表現で、憲法への明記を容認。集団的自衛権の行使については「認める」「限度を設けて認める」「認めない」と三つの意見が併記され、自衛隊の国際協力活動の是非も二分された意見がともに記された。

九条を含む改正論議について「当然のこと」とし、「自衛隊が憲法で認知されていないのが問題。カンボジアPKO、湾岸戦争、イラク戦争―。さまざまな局面で訓練を積んだ自衛隊がわが身をさらし、世界の平和維持に貢献している。だからこそ、自衛隊の正当性を憲法で明文化してほしい」と訴える。

「二度と戦争をしないと誓った九条(一項)はそれでいい。だが、現憲法は武器を持つことを認めない。戦争をするためではなく、抑止するために武器を持つのだ」

国民学校二年のとき、長崎で原爆に遭った。家屋の下敷きになった際の傷が腕にうっすらと残る。「若いころは『目には目を』と思う気持ちもあった。だが、核兵器はいけない。後々まで人間の体に害を及ぼす」。核の脅威を知る証人でもある。

現在の世界の核情勢について「核兵器の怖さが分かっていない国が持っている。しかも、われわれの近い国だ。簡単に使うことはできないだろうが、無防備でいいのか」と、日本に迫る脅威への対抗策を主張する。

「国際社会で自立する国家として、自分で自分の国を守るべきだ。真の平和を目指す心根の子どもを育て、百年、二百年先の規範となる憲法が必要。今がそのスタートライン」。いよいよ始まる本格論議に表情を引き締める。

▽しもじょう ようじ 長崎市生まれ。「国を愛する新しい国民運動ネットワーク」として発足した全国的な市民団体「日本会議」の本県組織「日本会議長崎」理事長。県神社庁長、淵神社宮司。六十七歳。