元山寿恵子さん 護憲で平和守りたい
太平洋戦争の終結から二年足らず。日本国憲法は、一九四七年五月三日に施行された。「もう戦争しない、って憲法九条で約束したとき、どんなにホッとしたことか」。女学生だった当時の心境を振り返る。
子ども時代はずっと戦争。「日本は神の国」と教えられ、戦争に絶対勝つと思い込んでいた。小学校に入学した三七年に日中戦争が始まり、太平洋戦争に突入。女学校に入ると、軍需工場に駆り出され、原爆にも遭った。
それだけに、自由な行動、発言が保障された新しい憲法はうれしかった。四十年もの小学校教師時代、戦争は二度とあってほしくないと、子どもたちに戦争のむごさ、原爆の悲惨さを語り続けた。
「戦争や原爆で奪われた多くの命と悲しみの上に憲法九条ができた。おかげで、六十年間平和に過ごせた。世界の人たちが認めた平和憲法。だからこそ大事にしたい」
護憲を主張する理由は、戦争に関するものばかりではない。「今の若い人たちの多くは、憲法は空気のようなものと感じ、みんな『関係ない』『難しい』と目をそらす。でも、そんな実体のない、堅苦しいものではない。平等に教育を受ける権利、男女平等、財産を守る権利―。生活に密着した物事すべて憲法が基礎なんです」
護憲、改憲、創憲―。いろんな立場の人が憲法を身近に語ろうと、二〇〇〇年七月、「活憲21ながさき」を発足させた。毎月一回小規模の学習会を続け、生活者の視点で平和や人権の大切さを議論する。
憲法調査会の報告について「九条を含む改憲の輪郭がはっきり見えた」と分析する。「『戦争放棄は堅持』と国民を安心させながら、いろんな解釈論を持ち出して、自分たちの都合のいいように九条までも改正するはずだ」
改正を急ぐ背景に、小泉政権の米国追随路線が見える。「米国に乗せられ、軍隊を置き、国際社会の旗手を務めたいのだろうが、もっと地味な貢献があるはず。現憲法は国民のためになる、と自信を持って言える。あえて変える必要はない」
報われることのなかった幼少期の思いを胸に抱きしめ、こう付け加える。「もうだまされない」
▽もとやま すえこ 長崎市出身。女学校三年の時に被爆。元小学校教諭。退職女性教職員県連絡会会長を務め、毎月九日の「反核九の日座り込み」も欠かさない。「活憲21ながさき」代表。七十四歳。