厳しい予測 米強硬姿勢に歯がゆさ
世界の核管理と核軍縮の在り方を検証、議論する「核拡散防止条約(NPT)再検討会議」が五月二日、米・ニューヨークの国連本部で開幕する。二〇〇〇年の前回は、非核保有国の結束が「保有核兵器の完全廃棄を達成する明確な約束」を結実させたが、その合意は見るべき前進のないまま五年が過ぎた。被爆六十年の節目の年、被爆地長崎の願う核兵器廃絶に向け、世界はどう動くか。再検討会議の行方を探る。
県内で今年初めて「夏日」を観測した四月九日土曜、長崎市の平和公園。県原水禁と県平和運動センターの「反核9の日座り込み」はこの日、二百八十九回目を数えた。
常連の被爆者や労組関係者に交じって、仲間の一人をニューヨークへ送り出す「高校生一万人署名活動実行委員会」のメンバーも顔を見せた。核兵器のない世界の実現を訴え、県外へ、国外へと活動の場を広げる若者たちの報告に、参加者の頼もしげな笑顔が広がった。
ただ、集会の穏やかな雰囲気とは裏腹に、交代でマイクを握った参加者たちは誰一人、NPT再検討会議への明確な期待を口にしなかった。
「今度の再検討会議には劇的な進展は望めそうにない。その空気を反映していたのだろうか」。集会の進行役を務める同センター事務局長の坂本浩(46)は、この時の雰囲気をこう分析する。
「聞こえてくるのは厳しい予測ばかり。いったい、どこをどう押したら状況が変わっていくのか―という歯がゆさがある」(坂本)
再検討会議の行方の鍵を握るのは、最大の核保有国・米国。しかし、複数の米高官が年明け前後から、「二〇〇〇年の合意は(過去の)歴史的文書」「時代は変わった」―などと核軍縮の進展に否定的な発言を繰り返し、新型核兵器研究費用の予算化などの動きも次々に表面化した。
さらに、再検討会議の開幕まで一カ月を切った四月六日には、二〇〇〇年の核軍縮合意の柱だった包括的核実験禁止条約(CTBT)について、米政府当局者が「死文」との認識を表明。会議への交渉方針として▽「国益に反する最終文書」の採択▽CTBTの早期発効を促す合意文書▽非核国への核不使用公約の条約化―などをことごとく拒否する姿勢を打ち出した。
「それでも、NPTは核に関する唯一の国際的枠組みなのだから、何とかこれを機能させるほかない」
被爆者の山川剛(68)=長崎市滑石三丁目=は〇一年の米中枢同時テロ以降、米国を二度訪れ、反戦・平和を訴えた。市民レベルの交流の中で、幾度となく手応えも感じてきた。
「米政権の路線が国内的にも決して支持されていないことは昨年の大統領選でも明らか。NPT加盟国の大多数は核を持たない国。最後までどう転ぶか分からない、と思いたい」と山川は言う。だが、その希望を裏付ける兆しは、開幕を間近にした今も見えない。(文中敬称略)