高校生1万人署名活動実行委 藤本絵梨華さん 語り合えば通じる
五年前にスタートした「高校生一万人署名活動」の初代メンバー。被爆六十周年の今年、後輩たちは過去最高の六万人分を目標に掲げた。
「初めて聞いたとき、『えっ』て思った。びっくりして、ソッコー(すぐに)反対した。これまでの最高が二年目(二〇〇二年)の四万三千人分。六万人を達成するには、県内の高校生を片っ端からあたって、あとは沖縄にお願いするしか…」
高校三年の夏、長崎であった「長崎・沖縄連帯集会」で、「広島と長崎のつながりは深いが、長崎と沖縄の関係は薄い」と聞いた。「何かできないか」―と、一万人署名活動実行委が始めた沖縄の高校生との交流。そのきっかけをつくった時のいきさつが忘れられない。
インターネットで沖縄県内の高校の住所を調べ、署名活動への協力を呼び掛ける手紙を約七十通書いた。返事が来た高校生と会うため、二年前の二月、たった一人で沖縄に向かった。
「署名の趣旨を話そうと思っていたのに、沖縄の高校生は署名を回収に来ると思っていて、千人分くらい集めてくれていた。もうめちゃくちゃ感動しました。それから沖縄には五回行った。去年の夏は一カ月間、那覇市内で暮らしました」
藤本絵梨華さん
頭上を飛び交う戦闘機のごう音、沖縄県本島の約二割を占める米軍基地―。生活と密接にかかわる沖縄の現実を初めて肌で知った。「核兵器廃絶より基地撤廃を強く求める人が多かった。でも、反戦という部分で署名に協力してくれた。そして、語り合えば思いは通じるってことが分かった」。被爆地長崎とは違う沖縄の歴史を学び、着実にネットワークを広げている。
長崎県内の大学に進学した数少ない実行委の卒業生として、後輩たちの署名活動をサポートする“お姉さん”的存在。だが、後輩たちは友達感覚で「絵梨華ちゃん」と呼ぶ。
「署名活動を、高校生は『先輩たちみたいにうまくやれない』と弱音を言うし、卒業生は『なぜできないの』と不満を漏らす。両方の橋渡しをするのが私の役目と思う。私たちを応援してくれるたくさんの被爆者の声に応えるため、沖縄の高校生と協力し、何としても六万人集めたい」(聞き手は報道部・高比良由紀)
▽ふじもと・えりか 1984年生まれ。活水高卒、活水女子大現代日本文化学科2年。高校生1万人署名活動実行委の卒業生でつくる「21世紀平和ネットワーク」でも活動。長崎市在住。20歳。