被爆60周年へ
 =ナガサキの課題= 5

被爆二世健康影響調査の郵便調査の発送作業に取り組む関係者=長崎市中川1丁目、放射線影響研究所

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被爆60周年へ =ナガサキの課題= 5 被爆二世問題 広がらぬ運動に焦りも

2004/11/30 掲載

被爆60周年へ
 =ナガサキの課題= 5

被爆二世健康影響調査の郵便調査の発送作業に取り組む関係者=長崎市中川1丁目、放射線影響研究所

被爆二世問題 広がらぬ運動に焦りも

親の被爆の遺伝的影響はあるのか―。被爆者の子として生まれた「被爆二世」。全国三十万とも五十万ともいわれるが、実数はつかめていない。

国は、被爆二世への遺伝的影響について「現時点では認められない」とし、その援護策は年一回の無料健康診断にとどまる。だが、放射線影響研究所(放影研、広島・長崎市)の被爆二世健康影響調査には、国も二世側も関心を寄せている。

調査は主に、がんや生活習慣病などの疾患に被爆の遺伝的影響があるかどうかを調べるのが目的。調査が本格的に始まって四年、被爆六十周年の来年度が最終年となる。

調査対象は、放影研が把握する長崎、広島両市と近郊に住む被爆二世と、親が被爆者でない同世代の計約二万四千人。四グループに分け、郵便で健康状態を尋ねた後、希望者に血液や尿検査などの健康診断を行っている。

放影研によると、科学的根拠となる結果を導くには一万―一万一千人のサンプルが必要。今年三月までに調査を終えた二グループは、郵便調査で約55%が受診を希望。うち八割が健康診断を受けたが、今年四月からの三グループ目は、郵便調査の回答率が落ち込んでいる。調査は正念場だが、援護策を求める被爆二世自身の反応は鈍い。

県被爆二世の会(丸尾育朗会長)は今年二月、これまで労組の関係者が中心だった組織の拡大を目指し、個人で加入できる地域組織「長崎被爆二世の会」を発足させた。

だが、結成集会に出席したのは、県被爆二世の会の関係者と取材マスコミの三十人程度。加入を希望する新顔はほとんど見当たらず、定期的な会合への集まりも悪い。

「二世の中心は四十―五十歳代。働き盛りで時間が取りにくい上、差別や偏見を恐れ、表に出る人が少ない」。県被爆二世の会の崎山昇事務局長(46)は、被爆二世運動のジレンマを語り、そして続ける。「被爆二世の健康不安は切実さを増している。調査結果が示される時期に、二世問題を国民的課題としてクローズアップさせたい」

放影研の調査は二〇〇六年度以降、解析作業に入る。県被爆二世の会には今、調査結果に基づく国の援護策拡充への期待と、広がらない運動への不安が激しく交錯する。