2200分の130 健康相談1割に満たず
今年、韓国で初めて実施された県と長崎市による在韓被爆者の健康相談。七月の陜川で七十人、十月の大田、平澤両市で六十人が受けたが、合わせて百三十人という数字は、在韓被爆者二千二百人の一割にも満たない。
本年度の派遣は二回限り。来年度以降は未定だが、県原爆被爆者対策課は残る約二千人への相談実施に前向きだ。
相談後のアンケートで「健康不安が解消された」と答えた被爆者は、初回の陜川で62%、二回目の大田、平澤両市で75%と多数を占めた。一方、二回目の相談を受けた約八割が「一年以内の再相談」を希望、継続的なケアを期待していることが分かった。
同課は「まだ相談を受けていない二千人余りと、今年受けた百三十人。待たせるわけにはいかないが、両方となると、医師団を一年中派遣することになってしまう」と困惑する。今後、相談の全体計画づくりを急ぐつもりだが、継続を望む人への対応も加わり、課題は逆に広がってしまった。
国の在外被爆者援護策は、二〇〇二年度から始まった被爆者健康手帳取得時の渡航費助成などをはじめ、昨年春からの各種手当支給制度など進展している。今のところ、手当支給の手続きは来日が条件となるため、韓国では、手当が受けられる人とそうでない人の格差が広がっている。
九月二十八日、寝たきりの韓国人被爆者、崔季〓さんが来日せずに手当支給を申請、却下された訴訟で、長崎地裁は国外からの申請を認める判決を言い渡した。だが、被告の長崎市は国に判断を仰いで控訴、解決は先延ばしにされた。
手当を受けている在韓被爆者約千五百人に対し、崔さんのような人は約百人と推定される。そのため、日本の支援者や韓国内では「解決が長引けば、援護を受けられないまま亡くなる人がさらに出てくる」と批判する。
相談事業に協力している大韓赤十字社特殊福祉事業所の白玉淑課長は「手当を受けている人は漢方薬などを買い、健康を気遣えるようになった。そうではない人は、今まで以上に見捨てられた気持ちになっている」と、やりきれない思いを代弁する。
白課長は「本当に救わなければならない人を救えないまま、日本政府がさまざまな事業を続けるのは理解に苦しむ」とさえ話す。こうした声にどう応え、より実のある援護策を構築できるか。被爆六十周年を控える”被爆国”に重い課題が投げ掛けられている。
【編注】〓は「徹」の「ぎょうにんべん」が「さんずい」