平和教育・平和文化 コーディネーター 舟越 耿一さん(58) 長崎大教育学部教授
二〇〇一年の米中枢同時テロ以降、米国は報復としてアフガニスタンとイラクに攻撃を仕掛けた。日本でも〇二年の日朝首脳会談以後、まるで自衛のためなら先制攻撃が許されるかのような論議がなされてきた。米国はユニラテラリズム(単独行動主義)を実践し始め、それと歩調を合わせる日本とともに「怒り、憎悪、恐怖、脅威をあおる政治」に陥ってしまっている。
テロと報復の連鎖により、現代は暴力と戦争の時代に入ったといえる。日本でも、北朝鮮のミサイルや核開発疑惑、拉致問題について国民が不安を感じ、それを政府や興味本位の報道があおっている。この状況は平和教育にとって「逆風」ではあるが、だからこそ「平和教育・平和文化」について考える意義がある。
今求められていることは、言葉で暴力を鎮めること。暴力ではなく物事を話し合いで解決し、平和に生きるということを学び、実践しなければならない。相手の言葉に耳を傾け、相互に理解する努力をする。その練習の場が学校であり、社会では文化ということになる。戦争に限らず、体罰や家庭内暴力、配偶者などからの暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)も同じこと。難しいことではないが、暴力を使わないという決意がなければならない。
広島、長崎は原爆投下に対し、報復ではなく、二度と繰り返してはならないと訴えてきた。暴力の連鎖を断ち切ってきた広島、長崎には、暴力を鎮める言葉を言う権利がある。ゲストスピーカーは日常的な活動や生き方として平和に取り組んでいる人たちで、日々の実践による経験に基づいた発言に期待している。暴力を鎮められる、説得力を持った言葉をどれだけ紡ぎ出せるかが、分科会の課題になるだろう。
日朝首脳会談 日本と北朝鮮の首脳会談は2002年9月に初めて行われた。小泉純一郎首相に対し、金正日総書記は日本人拉致事件に北朝鮮が関与した事実を認め謝罪。日朝は朝鮮半島の核問題解決などをうたった「平壌宣言」に署名した。