ジャーナリストフォーラムコーディネーター 萩野 弘巳さん(70) 県立長崎シーボルト大教授 元NHKヨーロッパ総局長 現代の戦争 どう報道
反核や平和のために行動する世界の非政府組織(NGO)が集う「第二回核兵器廃絶―地球市民集会ナガサキ」が二十二―二十四日、被爆地長崎で開かれる。二十世紀最後の年となる二〇〇〇年、「核なき新世紀」への願いを込めて一回目を開催。その後、核兵器をめぐる世界情勢は一気に暗転、核使用の可能性さえ危ぶまれている。この危機を「地球市民」はどう乗り越えていくのか。開幕を前に、分科会やフォーラムに出席する関係者に現状や課題を聞いた。
テーマは「現代戦争をどう伝えるか」。二〇〇一年の9・11米中枢同時テロ以降、米国のジャーナリズムはブッシュ支持一辺倒になった。イラクを攻撃しなければ国は危ないし、正義を貫けないと。
この一色に染まったジャーナリズムは、大本営発表をそのまま報じた日本の戦時中を思い出させた。
日本国内では平和を訴え、イラク戦争に対する批判の声もあったが、何となく米国につられ、攻撃は仕方がないという雰囲気になった。今回は「核」が全体のテーマではあるが、イラク戦争前後の世界のジャーナリズムを反省してみることが大切だと思う。
ジャーナリズムに対する批判が強くなっている。報道内容が市民感情に合わないということがあるが、報道機関は事実を正面から見詰め、事実を事実として伝えることが使命。個々人すべてが満足できる扱いは難しく、一方の意見だけをクローズアップすることはジャーナリズムの「自殺」を意味し、読者、視聴者をミスリードすることにつながる。報道に対する具体的な批判と議論が必要であり、会場との共通認識が得られるかどうかがポイントの一つだ。
現在の戦争と広島、長崎に原爆が落とされたときの戦争は違っている。今はさまざまな大量破壊兵器が実戦に使われている。問題を拡散して焦点をぼけさせてはならないが、逆に平和や戦争の問題を「核」だけに限ることも、問題の核心を外すことになりかねない。
フォーラムでは、メディアの自省と考察、そしてジャーナリズムの仕事を知ってもらう場にしたい。
地球市民集会ナガサキ 国内外のNGOが被爆地長崎に集い、核兵器廃絶に向けた道筋を話し合う国際会議。伊藤一長長崎市長の提唱で2000年、1回目を開催。国内外から延べ約5600人が参加し、長崎アピールを採択した。2回目となる今回は全体集会(開会、閉会)と8つの分科会、各団体の自主企画で構成する。