水盤 被爆者が求めた水
主要施設は地下一、二階にあり、地上部分には円形の水盤が、祈念館の“顔”として設置されている。黒御影石製の直径二十九メートル。雨水を利用する。
施設内には各所に、小さな水盤がある。来館者は盤上に満ちた水面や、水が壁を伝わる様子に出合い、水音を聞きながら回廊を進む。被爆直後、多くの人が水を求めながら亡くなったことから、「水」を強調する。
夜になると、地上の水盤から明かりが差す。盤の底にちりばめられた光ファイバーの数は約七万個。長崎で被爆直後に亡くなった犠牲者の命の一つ一つを表す。
建設を担当した国土交通省九州地方整備局によると、水盤に七万個の穴を開けるのに九カ月、光ファイバーを穴に埋め込むのに三カ月を要した。光を上へ向けて円すい形に放つための工夫にも、苦労があったという。