絵は語る
 =『あの日』見たナガサキ= 16(完)

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絵は語る =『あの日』見たナガサキ= 16(完) 田川フクエさん(74) (西彼大瀬戸町松島内郷) 故郷への道のり遠く

2002/08/17 掲載

絵は語る
 =『あの日』見たナガサキ= 16(完)

田川フクエさん(74) (西彼大瀬戸町松島内郷) 故郷への道のり遠く

村田シエさんと山本フクさん、母は市立商業高等学校の学生寮の寮母だった。竹の久保町の自宅で被爆した田川フクエさん(74)と父は心配で寮に急いだ。三人を見つけ故郷・松島へ。絵はそのときの様子。

「道のりがとても長く感じられました」

急場しのぎで作ったリヤカーが石ころに乗り上げるたび、村田さんが悲鳴を上げた。一番傷が深く、頭と足の裏からガラス片が出た。

九日夜、三重付近。農家で休ませてもらった。分けてもらった水とおにぎりの味は今でも忘れられないという。

十日昼に到着し、看病の日々。直後に村田さん、しばらくして山本さんが亡くなった。母は一カ月後に息を引き取った。

本当の母は二歳の時、病気で死んだ。病室で隣だった母が「子どもができないから」と引き取ってくれた。「人に優しく」と教えてくれた。最期をみとることができてよかったと思う。