前川スミヱさん(76) (長崎市竿浦町) 悲しみで涙止まらず
前川さんはあの日、母親と二人で自宅(西彼長与町高田郷)から五百メートルほど離れた田んぼで雑草を取っていた。突然、空が光ったかと思うと爆風が押し寄せ、急いで防空ごうへ逃げた。
翌朝、長崎から道ノ尾駅に運ばれてきた負傷者の救護に当たった。絵は、同駅に運ばれてきた負傷者の様子。二百人ほどいて、皆歩くこともできず皮膚が焼けただれていた。男女の区別さえつかない。口々に「水、水」とつぶやいていた。「おじちゃん、おばちゃん、頑張って」と声を掛け、水を飲ませて回った。「どうしてこんなに苦しむ人がいるのかと悲しくて涙が止まらなかった」と振り返る。
前川さんはこの絵を描いた後、小学生の孫たちに見せ、当時の様子を語った。「子どもたちは『戦争はいかんね』と言ってくれた。あの悲しみと恐ろしさを伝えるのが私の務め」。そう心に決めている。