宇木赫さん(67) (長崎市滑石3丁目) 熱気 川に飛び込む
「全身に浴びた光と熱、続いて起こった爆発の音は今でも忘れられない」。宇木さんは爆心地から約六キロ離れた西彼時津村浜田郷(現在の時津町浜田郷)で被爆した。
八月九日は近くの川で友人と泳いでいた。誰かが「敵機が来た」と叫んだ。いつもと違う飛行機のうなるような音がしたと思った瞬間、辺りに強い光を感じ、全身に「熱い」と思うほどの熱を感じた。その時、「飛び込め」という誰かの声で、川に飛び込んだときの様子を描いた。
父親は長崎市内で被爆し、山沿いを一晩歩いて帰宅。三カ月後、血を吐いて四十歳で死んだ。なぜ自分が死ぬのか分からないままこの世を去った。近所の四人姉妹は自宅庭で被爆。全員の髪が抜け、一人は亡くなった。
「六キロ離れていたが、放射線の強弱や濃淡は距離だけでは測れないと思う。戦争と一発の原爆に人生を大きく変えられ、悔しい。地球上に戦争のないことを願っている」