桑原重信さん(62) (長崎市南山手町) 燃える女性の姿 焼き付く
桑原さんは長崎市東北郷(現在の住吉町、爆心地から一・八キロ)の自宅で隣に住む姉妹と遊んでいた。「外がピカっと光ったと思うと、目の前が真っ暗になった」。家はつぶれ、近所の人が助けてくれたという。気付くと母と妹と三人で川へ向かって逃げていた。
「周りの家は燃え、助けてと叫ぶ声を聞きながら逃げた」。桑原さんは逃げる途中に見た光景を三枚の絵に描いた。これはその中の一枚で、背中が燃えているのに気付かない様子で走っていくおばあさんの姿。当時まだ五歳だったが、その姿は目に焼き付いているという。「『怖い』というより信じられない気持ちの方が強かった」
幼かったこともあり、原爆当時の様子を詳しくは覚えていない。しかし、桑原さんは「平和は日常にある。私たちが描いた絵と今の長崎を見てもらい、あらためて平和について考えてほしい」と静かに話す。