平和へのメロディー 6(完)

「千羽鶴」の最終リハーサル。8月9日に本番を迎える=長崎市文教町、純心女子高体育館

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平和へのメロディー 6(完) 純心女子高校 平和祈念式典で歌う 千羽鶴 夢と希望 虹色に祈る

2002/07/28 掲載

平和へのメロディー 6(完)

「千羽鶴」の最終リハーサル。8月9日に本番を迎える=長崎市文教町、純心女子高体育館

純心女子高校 平和祈念式典で歌う 千羽鶴 夢と希望 虹色に祈る

緋(ひ)、白、赤、紫、黄、青、緑、藍(あい)、桃色。

普段、何気なく見ていた色だった。この曲に出合うまでは。

「大島ミチルさんの作った曲が好きで好きで、たまらなく大好きで…」

純心女子高校一年の高木麻帆さん(15)は「千羽鶴」(作詞・横山鼎)を歌えることが、何よりもうれしかった。

テレビドラマの主題歌が大島さんの曲だと分かると、ストーリーはそっちのけ。曲だけ聞いて満足した。

純心中学校に入りコーラス部へ。「千羽鶴」との出合いは、その一年生のとき。配られた聖歌集の中にあった。シンプルな歌詞、メロディーも凝っていない。でも「泣いちゃう」。

三月、中学と高校のコーラス部合同で、西彼外海町のド・ロ神父記念館で初めて歌った。終わった後、おばあちゃんたちが「きれいな歌声でしたよ」と言ってくれた。何百回でも歌いたかった。

爆心地から約三キロ。純心女子高校では、二百四十二人が原爆の犠牲になった。校舎も、少女たちの希望も、すべてなくなった。

同校は毎年、八月九日の平和祈念式典で合唱している。一九九五年からは、被爆五十年の記念歌として生まれた「千羽鶴」を歌っている。

千九百四十七点の応募の中から選ばれた詞。平和を誓い、平和を祈り、未来に希望と夢を託して、さまざまな色の鶴を折っていく。そんな歌詞。

曲を作った大島さんも、純心女子高校の卒業生。作曲家の大島さんは、曲作りの依頼を受け、詞を見るまでは力強く作ろうと思っていた。でも、見た瞬間にそのイメージは吹き飛んだ。「詞が虹色に輝いて見えた。温かかった」。大島さんは振り返る。

優しい詞、包みこむ歌。自分たちだけではなく、世界中の人が幸せになってほしい。そんな平和へのメロディー。

今月十九日、式典で歌う純心女子高生たちの最終リハーサルがあった。一年生約三百人が、真剣な表情で先生を見詰める。

「『平和』を一番大事に歌ってください。五十七年前に、熱くて、苦しくて、亡くなられた人のために。そして、今後、平和でありますようにって」。音楽主任の松本裕子教諭は語り掛けた。

高木さんは、よく鶴を折る。折り紙は昔から好きだった。青、赤、黄…。気付いたら、周りにいっぱい。

歌詞の折り鶴の色は「虹色」で終わる。「私には、亡くなった人が眠ってもらえる感じの色。平和な未来への懸け橋の色」。そういう思いを胸に高木さんは八月九日に歌う。